50 6.おわりに 6-1.本研究のまとめ 本研究では、中心市街地におけるまちづくりを進める上で求められる評価手法と、関係者が納得できる指標を検討するため、豊田市中心市街地を対象地域として、歩行者数や商業販売額、用途別建物配置、市街地開発等の長期的な変動の関係と、新型コロナウィルス感染症の影響分析を行った。 長期的な変動について、歩行者数と建物用途別面積や電話番号件数、商業販売額等の関係を分析した結果、全体として明確な関係性は認められなかった。 Wi-Fiパケットセンサー(WPS)データに機械学習の手法であるトピックモデルを適用し、データから「通勤・通学」「夜の飲食関連」「日中の活動」などの豊田市都心における人々の活動の特徴を抽出した。COVID19の影響により、特に「夜の飲食関連」の減少が大きいことを確認した。 モバイル空間統計や歩行者通行量、WPSのデータを用いてCOVID19の影響を分析した結果、モバイル空間統計に比べて歩行者通行量やWPSの方がCOVID19の影響に敏感に反応することから、人手を把握する指標として適していることを確認した。 以上で得られた知見だけでなく、本研究で使用したWi-Fiパケットセンサーデータをはじめとするビッグデータの分析にあたり、人工知能(AI)の一部、機械学習の手法であるトピックモデルや、時系列分析手法に含まれる状態空間モデル(ベイズ構造時系列モデル:bsts)など、新たな分析手法を適用して結果を得られたことも、本研究の成果と言える。 6-2.今後の課題 本研究では、様々な指標によるまちづくりがもたらした長期的な効果を説明する有効な指標を見出すには至らなかった。この点については引き続き検討することが必要である。また、中心市街地の活性化を考える際、どのような状態を目指すのか、その状態を計測し評価しうる適切な指標があるかを考える必要がある。 さらに、ビッグデータを分析する新たな手法に挑戦し結果を得ることはできたが、それらをまちづくりに生かす方法も検討する必要がある。
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