豊田市都心の長期と短期の両面によるまちづくり活動の評価
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48 化するなどして影響は小さい。一方後者は帰宅、飲食業の営業自粛等が多重に影響し、現在でも5人以上の会食の自粛が要請されているためと考えられる。 3)使用データ別の影響 モバイル空間統計は、統計的に有意な差が認められる場合が比較的少ない。これは、前節でも考察したデータの特性が関係しているためと考えられる。一方、モバイル空間統計が比較的大きな影響を受けている場合がある。特に顕著なのは「県全県時短営業要請」であり、モバイル空間統計の有意確率が高い(p値が低い)。これは、この介入が年末年始と重なる期間に出されたもので、帰省や行楽のために遠出をする人が感染拡大後は減少し、その影響が滞留人口に現れているものと考える。 各データの絶対効果と介入前期間の観測値の比の大きさは、基礎集計で確認したのと類似の傾向にある。 5-4.小括 本研究では、COVID-19の感染拡大が豊田市中心市街地の人出等に及ぼした影響を複数のデータを用いて分析を行い、感染対策として取られた介入別の影響の分析や、時間帯別の影響の違いから活動別の影響の分析、用いるデータの違いによる影響の差の分析などを行った。 本研究の結果得らえた主な知見を以下に整理する。 • 分析対象とした介入のうち、「緊急事態宣言1回目」の影響が特に大きいことを確認した。また、日中の活動では緊急事態宣言1回目解除の後に行われた介入の影響が小さく、時間帯によって影響が異なることも確認した。 • 18時台や20時台は他の時間帯と比べて影響が大きい傾向にある。これは、テレワーク浸透、不要不急の外出自粛、飲食業に対する営業自粛が多重に影響しているためと考えられる。 • データの違いによる介入により受ける影響の大きさは、影響の大きい順に、駐車場利用実態、歩行者通行量、WPS、モバイル空間統計の順となった。このようになった背景には、捉えている対象が異なることに加えて、データが捉える量の違いも関係していると考えられる。 • 季節変動を除くため1年前の同期間との階差を取ったデータに対してbstsを適用し、介入による影響を分析した結果、緊急事態宣言1回目をはじめとする多くの介入で、統計的に有意な効果が認められた。一方、お盆や年末年始などコロナ前に帰省や行楽などで中心市街地から人が減少時期と重なる介入は、特異な結果が得られたことから、1年前との階差を取って分析する際は留意が必要である。 今後の課題として次のことが挙げられる。まず、今回の分析では時間帯別の総量の変化の分析を行ったが、モバイル空間統計の年齢階層別人口やWPSデータから得られる来訪頻度や滞在時間などのデータも活用し、変化の内訳を明らかにすることで変化の実態をより詳

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