豊田市都心の長期と短期の両面によるまちづくり活動の評価
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39 5.時系列分析と多様なデータを用いたCOVID-19感染拡大対策の影響分析 5-1.はじめに これまで、COVID-19感染拡大を抑えるため様々な対策が行われた。それらが都市の人出に及ぼした影響を把握することは、今後の対策検討に資することが期待される。 そこで本章では、これらの交通に関する多様なデータを活用してCOVID-19感染拡大を防ぐための行われた対策による影響を把握し、データの種類により把握できることの違いを明らかにすることを目的とする。 5-2.方法 (1)分析対象地域 本研究の対象地域は、行政、民間、研究機関等により交通に関する様々なデータが収集・蓄積されている愛知県豊田市の中心市街地とする。ここでの中心市街地は、豊田市中心市街地活性化基本計画で定める範囲とする。 豊田市の中心市街地では、様々な主体により交通に関するデータ収集が行われている。まず、豊田市役所により2008年から歩行者通行量の常時観測が継続的に行われている。これは、中心市街地の20か所(2021年3月時点)において、カメラによる自動計測装置(パロッシー)で年間を通して常時観測しているものである。また、中心市街地に所在する駐車場を管理する豊田まちづくり株式会社は、駐車場の利用実態を収集している。さらに、著者らは、2019年9月にWi-Fiパケットセンサー(以下、WPS)を設置し、継続的にデータを収集している。 (2)使用データ 本研究では、前項で記載した各種データに加えて、株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)の携帯基地局データから生成される「モバイル空間統計(r)(分布統計)43)」のデータを用いて豊田市中心市街地における人出等の変化を分析する。 本研究で使用する各種データの特徴を表-1に整理する。各データの取得範囲やセンサーの設置地点を図-1に示す。 歩行者通行量の自動計測装置は、対象地域における人の流動把握を意識した配置がなされている。すなわち、中心市街地の中心に位置する名鉄豊田市駅等の鉄道駅を中心として放射方向に行き来する人の流動を捉えるよう配置されている。WPSは、歩行者通行量の自動計測装置に近い位置に設置するとともに、中心市街地縁辺部の主要施設にも設置している。 ここで「人出」について説明を加える。人出とは「人が多く出てそこに集まること」(デジタル大辞泉)とある。本研究で使用する歩行者通行量、駐車場利用実態、WPSデータは、主に中心市街地に出てきて歩行したり駐車場を利用する人々を捉えたものであり、人出と 43 「モバイル空間統計」は株式会社NTTドコモの登録商標である。

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