豊田市都心の長期と短期の両面によるまちづくり活動の評価
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38 4-4.小括 本章では、WPSで収集したデータにトピックモデルを適用する方法の検討や、トピックの抽出結果の分析を通じて適用可能性の検討を行うとともに、抽出されたトピック別の活動の変化からCOVID-19の感染拡大が人出に及ぼした影響を分析した。 WPSデータをトピックモデルの入力データであるBoW表現に変換する際の考え方は、既往研究を参考にしつつ、中心市街地での人々の活動は時間帯によって異なることを考慮し、単語には地点と時間帯(8時間帯)の組合せ、文書は1端末1日のデータ、単語の出現回数は滞在時間の階級とした。 抽出されたトピックの特徴を、曜日の変動やCOVID-19感染拡大後の変動の観点から分析した結果、通勤・通学や夜の飲食関連の活動、日中の活動など、中心市街地における人々の様々な活動を特徴として抽出することができた。 そして、COVID-19関連の出来事とそれぞれのトピックの量の変動を対比して分析した結果、人々の活動によって変化の幅に違いがあることが把握できた。最も減少が大きいのは夜の飲食関連の活動であり、他の活動と比べて回復しにくい実態が確認できた。また、中心市街地における日中の活動や駅から離れた縁辺部での活動は、比較的減少が小さい。これらの活動は、中心市街地やその周辺の居住者の活動が多く含まれると考えられることから、COVID-19感染拡大の影響を受けにくいものと考えられる。このように、トピックモデルで抽出した人々の活動の特徴は、COVID-19感染拡大の影響も表現し得るものであることが確認できた。 WPSデータの分析手法として従来から用いられてきたクロス集計や多変量解析と比べて、トピックモデルを適用することで分析に恣意的な判断が入りにくく、多様な特徴を簡便に抽出できる。トピックモデルはWPSデータから活動の特徴を抽出する分析手法として利用できることを示した。 今後の課題としては、BoWの作成方法の改善可能性を検討することがあげられる。今回は地点ごとに時間帯を8つに区切って単語を定義し、滞在時間のランクをその量としたが、他にも方法が考えられるため、検討することが求められる。また、本研究ではトピックの抽出とその変化傾向の分析を行ったが、トピックごとに各端末のODや滞在時間などを分析し、各トピックに対する理解や、COVID-19の感染拡大後の変動に対する解釈を深めることなどが求められる。これら通じて、WPSデータからCOVID-19感染拡大の影響を把握するだけでなく、中心市街地のあり方を検討する材料を提供することが重要である。

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