豊田市都心の長期と短期の両面によるまちづくり活動の評価
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28 WPSから得たビッグデータを用いて移動の特徴を抽出する研究は、主に観光客を対象として行われてきた。これらの研究は対象が観光客であるため、対象地域で日常的に暮らす人や仕事をする人は分析対象外とされている。 COVID-19の感染拡大の影響は、観光に多大な影響を及ぼした。しかし本稿で着目するのは、通勤や通学、買物や業務など、人々が日常的に生活を営む中心市街地における様々な活動に対してCOVID-19の感染拡大が及ぼした影響である。WPSデータから中心市街地における人々の多様な活動を抽出することは、ビッグデータの分析手法が適していると言える。そこで本稿においてもビッグデータの分析手法のひとつであるトピックモデルを適用する。 本稿の特徴は、WPSデータを用いて中心市街地における人々の日常的な活動の特徴をトピックモデルを用いて抽出すること、及び、得られた特徴の変化を分析することで、中心市街地の人々の活動にCOVID-19の感染拡大が及ぼした影響を分析することにある。 4-2.方法 (1)対象地域の概要 愛知県豊田市は愛知県中央部に位置する人口約42万人の中核市である。中心市街地には名古屋鉄道豊田市駅と愛知環状鉄道新豊田駅の2つの鉄道駅が存在し、駅を中心として市街地が広がっている。駅周辺には市街地再開発事業で整備された商業施設等が集積している。中心市街地東側の矢作川を挟んだ対岸には、2019年に開催されたラグビーワールドカップ2019で試合が行われた豊田スタジアムがあり、Jリーグやラグビーなどのスポーツイベントやコンサート等が数多く開催されてきた。 豊田市では中心市街地の魅力を高めることで、来訪者、就業者、居住者を増やすことを目指して取り組んでいく施策や工程を定めた都心環境計画32)を2016年に策定し、現在は計画を具体化する様々な取組が進められている。第3期豊田市中心市街地活性化基本計画33)においても、歩行者通行量の増加などを実現するため様々な施策が位置づけられている。 (2)使用データ 1)WPSデータ 豊田市中心市街地のWPSは、2019年に開催されたラグビーワールドカップ2019の試合開催時の人々の活動を捉えることを狙い、2019年9月に設置された。大会終了後も継続して設置し、データを取得し続けている。 中心市街地に設置したセンサーのうち、駅周辺にあり長期のデータ欠測がない12地点において、2020年1月から2020年8月末までに取得されたデータを用いる。本研究で使用するWPSの設置個所を図4-1に示す。 WPSで取得したデータは、山梨大学で運用するシステムにより処理を行った。詳細は参 32 豊田市:都心環境計画, 2016. 33 豊田市:中心市街地活性化基本計画, 2018.

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