27 4.トピックモデルを用いた豊田市都心におけるCOVID-19の影響分析 4-1.はじめに (1)背景と目的 新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大は、私たちの生活に大きな影響をもたらした。イベントの中止、店舗の営業自粛、学校の休校、市民への外出自粛などが要請された。その結果、都市部の繁華街における人出が減少し、その増減が日々報道されることが日常化した。 COVID-19の感染が広がる以前は、中心市街地活性化など様々な観点から、繁華街の人出は増やすべきものと認識され、その増減が注目されてきた。緊急事態宣言下においては、人同士の接触を減らす観点から、繁華街の人出が増えることが人々の心配を招いた時期もあるが、経済活動の観点からはこの状況が続くことは望ましくない。様々な自粛要請が緩和され、少しずつではあるが日常が戻り始めた状況下では、感染予防に配慮しつつ人出を増やすための様々な努力が行われている。 人出の量を常時把握するための調査手法には様々なものがある。国土交通省が2019年3月に発行したガイドライン31)よると、歩行者量調査の手法には従来の人出によるカウント調査の他に、新技術を活用した調査手法として、GPSデータ、Wi-Fiデータ、レーザーカウンター、カメラ画像、などが紹介されている。特に近年では、Wi-Fiデータを取得するためのWi-Fiパケットセンサー(以下、WPS)を用いた調査が数多く行われている。WPSを用いることで、人出の量だけでなく、中心市街地内での回遊状況や滞在時間などの活動状況も把握することもできる。 また、人々の移動や活動の特徴を抽出する手法として、因子分析やクラスター分析などの方法が用いられてきたが、近年は機械学習の一種であるトピックモデルを用いる事例が増えつつある。 本章では、愛知県豊田市の中心市街地に設置したWPSで収集したデータを用い、トピックモデルを適用して人々の活動の特徴を抽出する。本研究の目的は、1)WPSデータにトピックモデルを適用する際の方法の検討や、得られた結果による適用可能性の検討を行うこと。そして、2)抽出された特徴ごとの活動の変化からCOVID-19の感染拡大が人出に及ぼした影響を明らかにすることを目的とする。 (2)本章で行う研究の特徴 2章で示したように、WPSを用いた研究は多数行われている。そうした中で寺部らは、WPSで取得したデータの分析方法として「設置しておくだけで次々に記録が蓄積され、その中には研究に必要のないものも含まれる膨大なデータセットになるため、ビッグデータの分析手法が適している」ことを指摘している。 31 国土交通省:まちの活性化を測る歩行者通行量調査のガイドライン(Ver1.1), 2019.3.
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