8 (2)トピックモデルを適用した調査研究事例 トピックモデルは、自然言語処理分野で提案された文書データの解析手法である。単語の頻度分布で表された文書から、特定の単語の頻度分布で表されるトピックを推定する手法である16)。 トピックモデルは文書データの解析手法として提案されたものであるが、土木計画分野においても数多くの適用例が存在する。たとえば、議事録やアンケートの自由記述データに適用した研究17, 18, 19, 20)は、もともとトピックモデルが提案された文書解析の手法として適用した事例と言える。 文書解析以外にも、様々な特徴抽出に用いられている。そのひとつに、地理情報を用いた市街地の特徴抽出21)や、道路構造データを用いた降雪によるスタック発生区間の分析を行った事例がある22)。前者は、3次メッシュの地理情報に因子分析とトピックモデルの2手法を適用し、地理特性を抽出した。その結果、因子分析では3種類の特性を抽出したのに対して、トピックモデルでは8種類の特性を抽出し、トピックモデルの利点を示している。また、後者は中国地方の直轄国道における降雪によるスタック発生記録と道路構造データを用いて、スタック発生区間の特徴的なパターンを抽出している。 さらに、本研究で対象とする移動データに適用した事例も存在する。古屋ら23)は、訪日外国人の訪問パターン特性を把握するため、GPSログデータを用いてトピックモデルを適用し、訪問場所の組み合わせパターンを分析した。また、川野ら24)は、熊本都心部で行われたスマホ型回遊調査の軌跡データに拡張トピックモデルを適用し、訪問しやすい潜在エリアの組み合わせや個人属性等を推定できる可能性を示唆する結果を得ている。 しかし、WPSデータにトピックモデルを適用した事例はみられない。 16 八田敏行, 三輪祥太郎:トピックモデルに基づく人行動分析技術, FIT2015(第14回情報科学技術フォーラム)第4分冊, 2015. 17 塚井誠人, 椎野創介:討議録に対するトピックモデルの適用, 土木学会論文集D3, Vol.72, No.5, I_341-I_352, 2016. 18 塚井誠人, 原祐輔, 山口敬太, 大西正光:土木計画学の研究トピックスの変遷, 土木学会論文集D3, Vol.74, No.5, I_349-I_358, 2018. 19 川野倫輝, 佐藤嘉洋, 円山琢也:トピックモデルと離散連続モデルを用いた自由記述の量的分析法, 土木学会論文集D3, Vol.74, No.5, I_277-I_284, 2018. 20 上原一輝, 川野倫輝, 円山琢也:自由回答データにおける代理回答バイアスの推定, 土木学会論文集D3, Vol.75, No.5, I_143-I_152 ,2019. 21 塚井誠人, 塚野裕太:トピックモデルによる詳細地理情報分析, 土木学会論文集D3, Vol.74, No.2, 111-124, 2018. 22 山本航, 辰巳嘉大, 小山田哲郎, 塚井誠人:トピックモデルによるスタック発生区間の分析, 交通工学論文集, Vol.6, No.3, pp.1-10, 2020. 23 古屋秀樹, 岡本直久, 野津直樹:GPSログデータを用いた訪日外国人旅行者の訪問パターンの分析手法の開発, 運輸政策研究, Vol.20, 2018. 24 川野倫輝, 木崎凛太朗, 円山琢也:トピックモデルの拡張モデルを用いたスマホ型回遊データの分析,土木計画学研究発表会・講演集, Vol.59, CD-ROM, 2019.
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