無信号横断歩道での安全に関する基礎研究~歩行者保護に資するソフト施策の視点から~
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-1- 1 はじめに 1-1 研究の背景と目的 わが国における交通事故発生件数および死傷者数は減少傾向にあり、平成28年度には67年ぶりに4千人を下回る死者数となった。さらに平成29年の死者数は3,694人まで減少し、様々な交通事故対策の取り組みが功を奏していると考えられる。しかしながら「横断中」や「人対車両その他」に分類される死亡事故の減少は鈍く、対策に注力すべき事故形態であると捉えられている1), 2)。 愛知県豊田市は、都道府県別死者数に関して最多を記録し続ける愛知県内においても、名古屋市を除く基礎自治体としては最多の死者数となっている3)。自治体の人口の差違や自動車の走行台キロの多寡はさておき、このような事態に対して同市は「交通事故死 “全国ワースト1位” 返上を豊田市から!」をスローガンに「歩行者保護モデルカー活動」と称した啓発活動を展開している。 同活動では、歩行者を護る運転行動として「制限速度の遵守」「夜間のハイビーム活用」「横断歩道での歩行者優先(歩行者を見たら必ず止まる)」の3つのメニューを掲げている。本研究ではこのうち「横断歩道での歩行者優先」に着目し、無信号横断歩道での停止行動の実態および自動車ドライバーへのアンケート調査結果から同活動を評価するとともに、歩行者保護運転の促進を目的とした啓発施策の課題と今後の方向性を探ることを目的としている。 1-2 研究内容 本研究の内容は以下のとおりである。 (1)無信号横断歩道における交通の実態整理(第2章) 横断中の交通事故なと、件数の減少幅が小さく、死亡・重傷事故につながりやすい人対車両事故の実態を整理するとともに、豊田市交通安全防犯課が実施している現地調査結果から、無信号横断歩道での歩行者保護運転の実態を整理する。 また、平成28年度に豊田市からの委託研究として実施したドライバーへの意識調査を再整理し、歩行者保護運転に対する意識の現状を示す。 (2)横断歩道における交通事故対策(第3章) 交通安全対策の考え方は、かねてより「人」「車両」「道路」の3要素に着目しなが

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