市街地での規制速度遵守を促す環境整備に関する研究
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-28- 5.まとめ 5-1.本研究により得られた知見 (1)規制速度設定に関する現状と議論 • 本研究において問題としている「最高速度」違反を伴う事故は少ないものの、その致死率は高く、重大事故の削減においては、規制速度の遵守を促すことは非常に重要な課題である。 • 政府の検討においては、平成21年度に設定された「基準速度」の考え方に基づいた規制速度の見直しが進められている。 • しかし進捗状況は芳しいとは言えず、優先順位をつけながら効果的な見直しが求められている。 (2)一般道路における実勢速度と特徴 • 一般道路では50km/h規制道路よりも40km/h規制道路の方が実勢速度との乖離が生じやすい傾向にある。 • 乖離が大きい区間の多くは郊外の補助幹線道路であり、沿道に農地が拡がっているなど見通しがよい区間であるという特徴を持つ。 • 規制速度の切り替わり区間などにおいても、乖離が生じやすい。 (3)生活道路での道路環境要因と個人差を考慮した助言型ISAの効果 • 最大超過速度が大きくなる要因として、道路幅員と歩道の有無が寄与していることが明らかとなった。 • カラー舗装・狭さくは最高速度の抑制に影響を与える要素であることが示された。 • 歩道の有無については、歩行者との接触の可能性が低くなるなどの理由からドライバーによっては速度が増加する可能性が考えられる。 • 普段の速度超過傾向が高い人ほど助言型ISAのみに比べてインセンティブプログラムによる速度抑制効果が大きく、普段の速度超過傾向の大小と助言型ISAによる効果との関係は、インセンティブプログラムによる効果と比べて弱いことが推察できた。 5-2.規制速度設定に関する今後の課題 生活道路における速度規制策は、ゾーン30といった面的な速度規制とその整備によって、社会に定着しつつあるように感じられる。その一方で、幹線道路や補助幹線道路などの一般道路に関しては、走行速度の実勢値を下げるための有効な方策が十分ではなく、未だ議論の余地があるように考えられる。

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