市街地での規制速度遵守を促す環境整備に関する研究
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-8- 2-3.速度規制のあり方に関する以後の議論と対策の現状 (1)速度規制のあり方に関する以後の議論 平成21年に基準速度が策定された後、警察庁は平成25年に「交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する懇談会(幹事:森本章倫 宇都宮大学大学院教授(当時))を設置し、速度規制の見直しの実態を確認するとともに速度違反の取締りのあり方を併せた速度規制のあり方に関する再検討が行われた。 平成25年12月に出された提言書によると、新たな速度規制基準に基づいた規制速度の見直しが各都道府県警察において取組まれ、一般道路は平成21年度から23年度の3ヶ年の間に13,000kmの区間で実施されている。提言書では「規制速度を引き上げた区間の72%において大幅な速度変化が無いこと」「16%の区間で実勢速度が6km/h以上低下したこと」で実勢速度との乖離が改善されるとともに「交通事故の増加には結びつかなかったこと」を報告し、規制速度の見直しが一定の効果を上げていると分析している。 (2)速度規制の見直し状況と対策の課題 一般道路の最高速度規制見直しは、上述のとおり平成21年からの3ヶ年で13,000kmの区間で実施され、一定の成果が得られていた。しかしながら道路標識等による速度規制がかけられている道路の総延長は約24万kmに及び、すべての道路の見直しには膨大な時間を要する。また規制速度を見直すということは、現地における道路標識や表示の撤去・設置といった施設整備が伴い、そのための予算確保も必要である。そこで優先順位を付けた計画的な整備が課題として挙げられている。優先的に見直すべき一般道路としては、実勢速度との乖離が比較的大きいと考えられる40km/h、50km/h規制道路を中心に、交通事故の発生状況を勘案しながら取組んでいくという方針が示されている。 生活道路では「ゾーン30」の整備が進められ、面的に最高速度30km/h規制をかけるとともにゾーンの出入り口での標識設置や狭さく、ハンプなどの物理デバイスの設置などが具体的な対策として取組まれている。将来的には生活道路において30km/hの法定速度を導入する可否についての検討という課題は残されているものの、目に見える対策の推進は成されているものと考えられる。一方、40km/hや50km/h規制の一般道路においては、未だに警察による取締りに頼る部分が大きいと考えられるが、同提言書においては、運転免許保有者へのアンケート調査結果から「規制速度の下方修正の理由をドライバーが視覚的に判断できない要因」への対応が必要であるという課題を掲げている。即ち、地域住民の要望や事故多発ポイントであるなどの理由であり、それらをドライバーに知らしめるような施策展開が求められている。

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