当研究所の研究員が論文発表を行いました
山崎研究部次長、西堀主席研究員、穆主任研究員が、2020年11月13日(金)~15日(日)にオンラインで開催された第62回土木計画学研究発表会・秋大会において、3件の論文を発表しましたのでお知らせします。
(1)山崎研究部次長の発表論文
【発表論文】
山崎基浩・野田宏治・山岡俊一・廣中啓:ICカード乗車券を用いた高齢者のバス利用体験の効果, 第62回土木計画学研究・講演集, CD-ROM, 2020.
【論文の要旨】
近年、バス等の地域公共交通へのICカード乗車券導入が進められている。一方、地方都市の高齢者にとって運賃支払い方法等バス利用の不理解が障壁となり「脱クルマ」に踏み切れない状況があると考えられる。そこでクルマの代替交通手段としてのバスを高齢者が認識し利用促進を図ることを目的に、ICカード乗車券によるバス体験乗車会を実施し効果と課題を整理した。豊田市内の中山間地域に居住する高齢者を対象に6回の体験乗車会を開催し、57名の参加が得られた。約1ヶ月後に実施した事後調査では、15名がICカード乗車券を利用しバスに乗車し、うち2名は新規利用者であることを確認でき、ICカード乗車券利用普及が高齢者のバス利用促進に寄与する可能性が示唆された。またICカード乗車券の利点について理解が深められたとともに「友人とのバス外出の楽しさ認識」「バス利用に対する自信の芽生え」が確認できた。
(2)西堀主席研究員の発表論文
【発表論文】
西堀泰英・加藤秀樹・豊木博泰:トピックモデルによるWi-Fiパケットセンサーデータを用いた中心市街地の人出に対するCOVID-19の影響分析, 第62回土木計画学研究・講演集, CD-ROM, 2020.
【論文の要旨】
本研究は、人流調査に用いられるWi-Fiパケットセンサー(以下、WPS)データに文書データの解析手法であるトピックモデルを適用し、地方都市の中心市街地の人出に対してCOVID-19が及ぼした影響を分析するものである。愛知県豊田市の中心市街地に設置した12箇所のWPSから得た、日本国内で感染拡大が始まる前の2020年1月から、政府による緊急事態宣言期間を含む8月末までのデータを用いた。トピックモデルにより、平日の通勤通学や週末夜の繁華街の活動など、特徴的な20個のトピックが抽出された。それらのトピックの時系列的な変化から、COVID-19の感染拡大防止のための様々な対策が、中心市街地の人出に影響している実態を確認した。そして、本研究で用いたトピックモデルは、WPSデータにも適用できることを確認した。
(3)穆主任研究員の発表論文
【発表論文】
穆蕊・山崎基浩・西堀泰英・安藤良輔:シミュレーションにより非線形計画モデルを用いる信号制御の検証, 第62回土木計画学研究・講演集, CD-ROM, 2020.
【論文の要旨】
伝統的な信号制御設計方法は、Webster(1966)が提案した近似最適サイクル長の計算式によりサイクル長を計算し、各現示の青時間を交通需要率の比率で配分する。本研究は、信号制御計算方法の遅延計算式を用いて、平均遅延最小化を目指す信号制御の非線形計画モデルを構築する。構築した非線形計画モデルを検証するために、オープンソースの交通シミュレーションツールSUMOを利用して、単独平面十字交差点を対象として、想定した幾つかの交通需要シナリオのミクロ交通シミュレーションを行う。伝統的な信号制御設計方法と本研究で開発した方法を適用した場合の結果を比較する。その結果、本研究で提案した手法は伝統的な方法と比べてサイクル時間は少し長くなり、平均遅延時間と遅延時間の変動係数が短くなる結果が得られた。