- 8 - い、クレームも少ない、そんなところがあるかと思います。そのため、大きな声になりにくく、コミュニティ交通の重要性が一般の国民になかなか認識されにくいという特徴があります。 もう1つ、コミュニティ交通の輸送実態として、出発地、要するにご自宅はいろんな場所にありますし、目的地もそれぞれで、ばらばらです。大量の方を1つの地点からもう1つの地点に輸送すると効率がいいわけですが、ちょうど真逆をいっています。加えて、利用者数が少ないので、タクシーのようなやり方で輸送することになり、1回あたりの輸送費は高額になります。 それなのに、利用者の支払い意思額は、これも当たり前の話ですが、高くありません。タクシー等に対しても若干高いなと思っておられる方が多いと思います。一般に輸送にあまりたくさん払いたくないという本能があるんだろうと思います。なので、輸送にかかる費用に対して、用者の支払う代金が少ない、つまり、利用者の負担割合が小さいというのがもう1つの特徴です。 人材・財源不足に焦点を当てて分析いただいていますが、そもそもこういう特徴がありますので、コミュニティ交通は黒字にはなりにくいというか、ほぼならない事業であると受け取ってもらっていいと思います。 少人数を低料金で運ぶには、利用者以外で費用を負担する方が不可欠です。それができているうちは事業が回りますが、収入が十分でない場合、どこかに負担がかかります。運転者の収入を削って、要はボランティアに近いかたちで運転していただくことで成り立たせるところもあります。 これが人材不足の直接の要因になっている部分があります。運転は人を輸送するわけですから、事故リスクが当然ありますし、人の命を運ぶという極めて重い役割を持っているにもかかわらず、報酬が少ないわけですから。 ご報告の中で利用者1人あたり支出が多いほうが持続可能という話がありましたが、私が仮説として考えたのは、運転者に適切な賃金を支払うと、1人あたり支出はたぶん高くなりますが、簡単に辞めないで継続してもらえるのではないかというものです。 論点1をまとめますと、コミュニティ交通は生活に不可欠な輸送サービスですが、長期的に持続可能な事業モデルが確立されていない、そういう事業領域かなと考えます。 論点2として、人材不足の原因を挙げました。 人材不足に陥る要因として、運転者にそもそも高齢者が多いことが関係しているのではないかと思います。報酬が少なくても運転を引き受ける方は高齢者に多い。年金受給者もいらっしゃいますし、別の仕事を持っている方、あるいは、金銭に余裕のある方が引き受けていることもあると思います。逆に言うと、報酬が少ないので、若い世代が長期的に働ける仕事になっていないということです。 これと別に、交通事業者は交通事業者で人材確保困難な状況に直面している場合が多くあります。これは自家用有償などで運転者が不足しているのと- 32 -
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