平成29年度 研究成果報告会開催記録
21/52
- 21 - 西堀さんの先ほどの図をお借りしてもう少し具体的にお話ししますと、都会のほうが人口あたりの死亡事故件数が少ないことから、都市の集積度合いが恐らく関係しているだろうと分かります。公共交通が充実していて、それらを使う人が多いから事故が少ないということもあると思いますが。 しかし、それでも上下しているところに西堀さんは着目し、交通運転マナーという観点から研究を進めておられます。 この点は実はこれまであまりできてこなかったところです。交通運転マナーは事故に関係していると皆さんも思っていらっしゃるでしょうし、私自身も思っていますが、統計的・定量的にその関係をしっかり明らかにしたものがなかったので、今回それにチャレンジされたことは非常に素晴らしいと思います。私自身がいろいろなところでお話をさせていただくとき、今までは「関係があるんじゃないかな」ぐらいのことしか言えませんでしたが、これからは「あるんです」と言えるのかなと思います。 今回、運転マナーと事故との関係を見られましたが、そもそも運転マナーの違いは地域によって何か傾向があるのか、例えば都市部のほうが運転マナーがいいのか、教えていただきたいと思います。 西堀:コメントとご質問をありがとうございました。 運転マナーと都市規模との関係ですが、JAFさんのアンケート結果をざっと見た感じでは、あまり傾向はないと思いました。福井県、香川県は運転マナーがかなり悪いということで挙がっていますが、それよりも都市規模の大きい愛知県も運転マナーが悪いし、逆も当然あります。人口あたりの事故件数の関係のような明確な傾向は見られません。 松尾:そうすると、交通運転マナーはどうやって形成されるのか、すごく興味深いところです。地域によって違いはあるものの、原因は分からないと。今後ぜひそういうところも見ていただけると非常にありがたく思います。 私からは以上です。 司会:時間も押していますが、会場の皆様からご質問をお受けしたいと思います。ご質問の際にはご所属とお名前を述べてからお願いいたします。 ご質問のある方は挙手をお願いいたします。 ございませんか。 では、松尾先生からもう1問。 松尾:運転マナーはどう形成されるかということについては私もよく考えています。 東北と愛知県で横断歩道での停止率を学生を使って調査したことがありまして、結果は東北地域のほうが停止率が低かったのですが、そのときに一緒に調べた学生は、東北のほうの、どちらかというと都会ではないほうの出身だったのですが、「このぐらい低いのは当たり前ですよ」と言って、愛知県で調べたときには「こんなに止まってくれるなんて」と逆に感動していたのです。 それは多分、子どものときから、どの車も止まらないから、それが当たり前で、要は横断歩道でも歩行者は車が行ってから渡るものだという意識が形成されてしまったのではないかと思います。 先ほど最後にありましたが、交通安全教育については、子どもに対する教育と親に対する教育、それぞれ戦略をしっかり考えていく必要があるのかなと思います。 西堀:去年、猿投ダンプ事故から50周年を契機としたシンポジウムにからめてアンケートをさせていただいたのですが、横断歩道付近に歩行者がいたら、車は一時停止しなければならないことを知らない中学生が結構いました。そういう意味で学校での教育は大事だと思います。
元のページ
../index.html#21