平成29年度 研究成果報告会開催記録
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- 16 - まず、「全事故×リスク・起こりやすさ」の関係です。 この表に相関分析の結果がありますが、赤い枠で囲っているのが、相関分析により、統計的に有意に相関があるといえる結果が得られた指標です。ここでは赤い枠で囲った指標を使って考察しています。 全年齢の全事故と高齢者の全事故の比較では大きな差が見られませんでした。全年齢の事故も高齢者の事故も同じような地域特性が関係して起こっているという見方です。 その中で有意な相関がある指標として、道路構造に関係するものでは、雪日数が多い、走行速度が高いと事故件数が少なく、社会環境では、人口あたりの土木費、インフラコストが高いと事故が少なく、運転マナーでは、横断歩道で一時停止しない、スマホを使用の割合が多いと事故件数が多いといった関係にあります。 次は、「死亡事故×リスク・起こりやすさ」の関係です。 同じように全年齢の死亡事故と高齢者の死亡事故で大きな違いは見られませんでした。 どんなことが関係しているかというと、リスクでは、人口集積が高い、徒歩分担率が高い、これも人口集積とかなり関係しますが、こういった状況では死亡事故が少ない傾向にあります。道路構造では、信号が多い、横断歩道が多い、道路延長が短い。道路延長が短いというのは、道路が充実していないという見方もできるかと考えていまして、道路交通が複雑だったり、道路環境が複雑だったり、そういった指標であると考えます。あと、走行速度も関係していて、そういう状況では死亡事故が多い傾向があります。社会環境では、高齢化率やインフラコスト、県民所得も関係しています。運転マナーの良しあしもやはり関係しています。 ここで先ほどの全事故と比較してみますと、走行速度やインフラコストの向きが違います。全事故ではインフラコストが高いと事故が減るし、速度が高いと事故が減ります。スムーズに走行できるので、事故が起こりにくいということかと解釈しています。一方、死亡事故は速度が上がると増えます。速度が高いと衝突時のエネルギーが大きいので、死亡事故につながりやすいという見方ができます。 お気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、死亡事故では全市街地平均走行速度を使い、全事故ではその他市街地平均走行速度を使っています。いろんなデータを使っていますので、種類が違います。全事故は「その他市街地」ということで、人口集中地区(DID)という人がたくさん集まっているところ以外の走行速度を使っています。死亡事故は「全市街地」なので、市街地全体です。似たような指標なので、そんなに大きな違いはありませんが、事故の種類によっても取り入れられ方が違っています。
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