平成27年度 研究成果報告会開催記録
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- 7 - 業者に公共交通施策への関与を促して現在に至っていると考えられます。 今後、タクシーが生き残って交通施策に活用されるためには、自治体が積極的に関与していくことと、タクシー事業者がそれに応えていくという意識改革が必要です。これは補助金を入れるという意味ではなく、自治体の施策に対してタクシーも積極的にコミットしていくことが必要だということです。 しかし、自治体はタクシーが交通施策にどのように使えるのかが分からないし、一方、事業者は採算がとれるかどうかが分からないので、自治体の事業に参加していいのかどうかが分からないという状況が課題として考えられます。 そこで、タクシーを活用した公共交通施策としてこういったことができますよというモデルを提示することが必要です。 その際のキーワードとして挙げられるのが、交通サービスへのニーズの多様化です。例えば高齢者の方、障害者の方、妊産婦の方、子ども、運転が苦手な方、さまざまな方々がいらっしゃり、求められる 交通サービスのニーズも非常に多様化していることを踏まえる必要があると思います。 もう1つは、コミュニティバス、デマンド交通代替手段としての可能性です。例えば空気を運んでいるバスという批判がよくされますが、コミュニティバスやデマンド交通では需要が少なすぎる、あるいは、利用者が高齢者や障害者に偏っているのであれば、タクシーを使うことで費用が少なく、利便性が高いサービスが提供できるかもしれないということです。 タクシーを活用した新たなサービスを、縦軸に1回の輸送の収益性、横軸に地域の中にどれだけの需要があるかということを置いて整理したのがこれです。 現在タクシーは、需要はそれほど多くないけれども、運転手さんの給料を賄えるぐらいの収益を確保しなければならないという、ある意味中途半端な位置を狙っていると考えられます。 これを収益の高い事業に拡大し、支払い意思額の高い客層に対してサービスを行う、例えば空港シャトル便や子育てタクシーを狙っていくという戦略があります。 あるいは、日常生活の移動に使ってもらうことを狙って、路線バスよりも少ないけれども、乗り合いがある程度成立するような深夜の乗合タクシーや短距離の相乗りのシステムを考えてるという方向性も考えられるでしょう。 あるいは、運賃以外の付加価値をつけていくという意味で、介護タクシーなど運賃以外の介助で収入を得る方法もあるでしょう。
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