平成27年度 研究成果報告会開催記録
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- 2 - スが強くなりますが、イギリスなどの英語圏には誰でも使えるという意味があります。そういうふうに見ますと、タクシーは鉄道や路線バスと並んで、まさしく公共交通であると理解できます。 ここでは、公共交通を「料金さえ払えば、特別な資格がなくても誰でも利用できる交通機関」と定義し、タクシーは公共交通であるとしておきます。 次に、タクシーが地域交通の中でどういった役割を果たしているかということです。 タクシーの特徴は24時間・365日・玄関先まで来るところです。これは鉄道・バスでは不可能です。深夜や病気・ケガのときにもきめ細かな対応ができます。自家用車を運転できない高齢者や障害者にとっては必要不可欠な交通手段となっています。 今後、タクシーを活用することで、鉄道・バスのみでは実現できない移動手段が提供できるでしょうし、高齢化が進む中、今後の交通施策において、ますます活用が期待されます。 ところが現在、タクシーは非常に危機的な状況におかれています。タクシーがなくなるかもしれないと書いてありますように、利用者の減少が続いて採算性が非常に悪くなっています。さらに、担い手である運転手不足も近年非常に深刻化しています。 これは2001年からのグラフですが、利用者数はずっと下がっていて、ピーク時である1970年代の半分以下、42%程度になっています。 一方、運転手の高齢化は進んでいます。全産業平均、すべての労働者の平均年齢は42歳ですが、タクシー運転手の平均年齢はそれよりも16歳も上の58歳です。これは2013年までのデータですが、年々ほぼ1歳ずつ平均年齢が上がっており、新しい人が全然入ってこない状況です。地域によっては平均年齢が70歳近いところもあるということです。 タクシーが今後生き残っていくには、タクシーを活性化させる、すなわち、タクシーのお客さんが増え、運転手に若い人が入ってきて、さらに利用者が増えるという好循環に持っていく取り組みが求められます。 ところが、こういったことを検討しようにも、タクシーについての実態はよく分からない状況にあります。 まず、タクシーの利用実態が分かるデータがありません。鉄道・バスはICカードの導入、あるいは、社会調査の実施などにより、利用状況のデータが蓄積されていますが、タクシーについてはそういうものが実施されていません。タクシー車両のメーター等のデジタル化についても、大手の事業者さんはともかく、中小の事業者さんはほとんど進んでいないため、電子データが蓄積されていません。たとえ、こういうデータがあったとしても、利用状況のデー

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