平成27年度 研究成果報告会開催記録
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- 6 - 最後にまとめとして、今回アンケート調査をベースに高齢者モビリティの実態を分析した結果を踏まえ、短・中期的、ここでは今後10年以内のモビリティ確保の方向性を考察していきたいと思います。 高齢者といいましても、お仕事をされたり、趣味・娯楽でいろんなところへ旅行されたり、元気で活発な方もいらっしゃいます。自立されている元気な高齢者の方々にとって自動車が非常に重要なツールになっていることは注目すべきことだと思います。高齢者が元気に活動できること、そして、その活動が健康で文化的であることは、今後ますます進む超高齢社会に向けて非常に重要なテーマだと思います。そういった意味合いでも自動車の役割をしっかり尊重すべきであろうと考えます。 しかし、忘れてはいけないのが安全性です。運転基準の厳格化がテーマとなるでしょうし、近年自動車の安全運転支援技術が非常に進んでいますので、そういった技術を活用しながら、自動車を運転する方が移動しやすい環境を産官学含めて展開していくことが大切だと考えます。 一方で、移動手段がない高齢者もいらっしゃいますし、今後、自動車を持てなくなる高齢者がますます増えてくることも予想されます。そういった高齢者を支える公共交通の重要性をしっかり認識し、生活実態に合った公共交通整備を進めていくべきであろうと考えます。 そこで、3つのポイントを挙げます。 1点目が交通課題の顕在化です。中山間地域は非常にコミュニティが強いため、地域内で問題が解決できてしまうという特徴があります。例えば送迎についても、地域のコミュニティで助け合う中で交通問題として認識されない実態が想定されるからです。 そこで2点目、公共交通運行の目的と意義の共有です。今後、高齢化率がさらに高まった場合、送迎も行えない状況も生まれます。地域の交通課題をしっかり顕在化させ、移動手段がない高齢者を支援するために地域で公共交通を運行することの意義を再確認することが大切です。 3点目、地域に合った公共交通像の議論です。地域に合った公共交通像を議論しながら、公共交通と自動車、いろんな手段を選択できるまちづくりが求められます。 自動車を運転する方に公共交通を使ってもらうためには、やはり経験を積んでいただくことが重要です。60歳から65歳の高齢の方に一度公共交通を使っていただく体験イベント等を実施することを含め、この10年をさまざまな移動手段を選択できる地域にするための移行期間と定めて、いろいろな交通政策を進めていくべきであろうということを結論とさせていただきます。 今後の展開としては、昨年度より行っている高齢者の自動車運転に関する分析を継続します。さらに本年度は中長期的なモビリティの維持・確保について、高齢者が就労した対価を公共交通の維持・確保に展開できないかといったところを分析していきたいと考えています。

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