平成25年度 研究成果報告会開催記録
49/64

交通現象は、まず、ファクト・ファインディング、どんな状況になっているかという現実を見ることが大切です。今回樋口さんが行われた調査もフィールドをいかに見て、どのような対策を打つかという非常に重要な視点だったと思います。 私がファクト・ファインディングから自分に言い聞かせていることに、見て、聞いて、考えて、行動すること、エムトリプルケー(MKKK)と言っていますが、調査等の依頼があったときも必ず見に行って、聞いて、考えて、行うということをしています。これが自分の研究姿勢です。 <研究の背景>手軽な乗り物(交通具)⇒自転車健康志向、節約意識(エコ)⇒利用者が増加・交通事故の増加<研究の目的>2/6 今回の研究の背景には、ここに至るまでに豊田都市交通研究所が取り組んできた自転車に関する研究があります。中でも非常に興味深く思ったのは、イグレスでの自転車利用実験です。豊田の駅に電車で来た人が、自分の自転車ではなく、周辺から高校生や通勤者が駅まで乗ってきた自転車を使って目的地まで行くという利用の仕方です。他にも枚挙にいとまがないくらいかなり研究されています。 また、先程ご説明がありましたように、走行空間として自転車を車道に下ろすことになりました。私が子どもの頃は、三角乗りといって、子どもが大人用の自転車の真ん中の三角に足を入れて乗っていたものです。よき時代でしたけれども、だんだん自転車事故が増え、車道から歩道にあげたという経緯がありますが、今度また歩道での自転車事故、歩行者との接触事故が増えたとか、いろいろなことで戻したということです。 それらを背景に、自転車を使っている人がどのように行動しているかを調査されるとともに、交通事故の分析をされました。一般的には交通事故の起きた場所を特定するのは大変な作業ですので、警察さんが持っているデータをもらってきて、ヒヤリと感じた箇所とマッチングすることができたのは研究所ならではと思います。 以前、土木学会で、ヒヤリハットで示される危険箇所と実際に事故が起こった場所とは相関がないが、関連はあるという発表がありました。ヒヤリとする場所はみんなが気をつけるから事故が起きないという意見もありました。しかし、ヒヤリと事故、共に多い箇所があるのは事実ですので、きちんと分析して道路の改善、改良につなげ、事故防止することが重要だと考えます。 この2つを調査した結果、導き出した考え方は評価できると思っています。 それから、自転車利用者の意識です。マナーが悪い、ルールを守らないとよく言われています。ルールはすなわち道路交通法だと思います。ルール違反と言うと、守っても守らなくてもいいような感じのものに聞こえますが、道路交通法違反と言われたら、びっくりして気をつけます。お父さん、お母さんも同じだと思います。子どもがルール違反だと言われても、「またルールか。まあ、いい」という感じになりかねませんが、法律で決まっていることですから、きちんと守らなくてはいけません。そういう意識がどの程度あるかということを調査されていました。自転車が歩道通行する際は車道側を走らなければいけないことを3分の1ぐらいの方が知らないとか、そんな調査結果も出ていました。 最後に、安全な自転車利用に向けて、自治体や警察とともに車と自転車とが混在する道路空間を整備していくということでまとめ、一方で意識啓発、教育の重要性についても言及されていました。 ― 40 ―

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る