平成25年度 研究成果報告会開催記録
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長が「公共交通は社会資本である」と宣言され、今の豊田市の公共交通バスネット網があるわけです。 ただ、公共交通が社会資本であるならば、これは評価しなければなりません。平成13年に行政評価法が施行され、国土交通省絡みの公共事業に関しては公共事業評価の基本的な考え方が示されていますし、中部地域におきましては、全国でもそうですが、地域公共交通運営においてPDCAサイクルを適用していこうということが、中部地方交通審議会第9号答申の「みんなで“創り・守り・育てる”」というスローガンの下、うたわれています。この言葉は今、全国的に使われています。この中のC(チェック)、評価をしていかなければならないということです。 地域公共交通をどう評価する?3【事業としての評価】「⾏政による負担はできるだけ低く抑えるべき」「効率的な運営」‣収⽀率:経費に対する収⼊割合‣財政投⼊額:利⽤者あたり,沿線住⺠あたり,サービス水準あたり,など【利⽤の実態】「利⽤されない公共施設は不要」「空気を運んでいるという批判」‣運⾏便数や単位区間あたりの利⽤者数‣沿線⼈⼝に対する利⽤者数(ポテンシャルの顕在化状況)【地域モビリティの確保】「地域住⺠の『移動手段』はどの程度確保されたのか、⽣活⾏動に影響はあるのか」‣アクセシビリティ‣アクティビティへの影響‣⽣活目的の達成状況【住⺠・利⽤者の意識と⾏動】「満⾜しているか、価値を⾒出しているか、⽀える意識はあるか、財政投⼊を容認できるか」‣提供サービスの満⾜度‣利⽤価値・非利⽤価値‣協⼒意向と協⼒⾏動 地域公共交通を評価するにはいろんな視点がありますが、これは自治体がバスを走らせていくことを考えた視点から整理したものです。 1つは、事業としての評価です。 行政による負担はできるだけ低く抑えるべきで、効率的な運営をしていくべきだという考え方に基づいています。 指標としては、収支率がよく使われます。経費に対する収入割合です。どれだけ使って、運賃収入等でどれだけ収入があったかということです。豊田市のバス評価でもこういった指標を使っています。また、率ではなく、財政投入額。財政をどれだけ投入しているかという指標もあります。利用者あたりどれだけ使っているのか、沿線住民あたりどれだけ使っているのか、提供しているサービス水準あたりどれだけ使っているかという見方もできるかと思います。 2つ目は、利用の実態です。 バスを自治体が走らせ始めた頃、「空気を運んでいるようなものを走らせてどうするの?」という批判を聞きました。公共施設であるのに利用されないものは不要ではないかという考え方です。 指標としては、運行便数や単位区間あたりの利用者数、沿線人口に対する利用者数です。ポテンシャルというのは沿線にどれだけバスを利用してくれる可能性があるかということです。このポテンシャルがどれだけ顕在化しているのかという状況を表す指標です。 3つ目が一番大事ですが、地域モビリティの確保です。 地域住民の移動手段がそのバスを走らせることによってどれだけ確保されたか。それが生活の行動にどれだけ影響を与えるのか。 指標としては、アクセシビリティが代表的です。いろんな施設に対してどれだけアクセスしやすくなったかということです。それから、アクティビティへの影響。生活活動へどれだけ影響があるのか。似たような話ですが、生活目的の達成状況。そのバスがあることによって、あるおじいちゃんが病院に通うことができる、通院という目的を達成できているという状況を表すような指標です。 4つ目は、住民・利用者の意識と行動です。 これはアンケートという形でよく調査されます。利用している方や住民がそのバスに満足しているのか、価値を見いだしているのか、支える意識はあるのか。最近はこのあたりの話が大事になっています。地域みんなで支えていく意識があるのか。財政投入を容認できているのか。 指標としては、提供サービスの満足度。いろんなコンテンツを提示して、それを満足しているかどうかを5段階で答えていただく方法のアンケートをよく実施します。それから、利用価値・非利用価値。非利用価値は、利用していない方々にとってもこのバスは価値があるのではないかという視点からの評価です。昨年度は非利用価値に着目した研究を報告いたしました。あと、協力意向と協力行動。 ― 17 ―
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