平成23年度 研究成果報告会開催記録
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現在、車がものすごい勢いで増えている中国では早急にEVを普及すべきという論調があります。しかし、今のままでEVを導入するとCO2排出量はかえって増大する懸念がある。つまり、車から排出されるCO2を減らすためには、単純に電動化ということではなく、発電も含めた総合的な取り組みを進めていかなければならないということです。 しかし一方で、世界の各国各地域では電気自動車に対する強力な補助政策が展開されています。新しいエネルギー領域での自国産業の育成強化という国家的な思惑も働いて、EVブームが加速しているわけです。 エネルギー環境問題を背景に、私ども自動車産業は今、大変大きな曲がり角を迎えています。巷でもいわれていますとおり、100年に一度の新しい自動車を再発明すべき時代を迎えていると認識をしています。その中で私どもトヨタ自動車がどう考え、何に取り組んでいこうとしているかということについて、次にご紹介したいと思います。 これはさまざまな動力源の体積あたりのエネルギー密度を比較したものです。グラフ左側から電池、ガス燃料、液体燃料を表しています。ご覧のとおり、電池のエネルギー密度は、最新で高価なリチウムイオン電池をしてもガソリンの約50分の1、すなわち、ガソリンエンジンと同じ航続距離を確保しようとするとガソリンタンクの50倍の大きさの電池が要るということです。一方、真ん中に示しております水素を用いた燃料電池は、リチウムイオン電池の約10倍のエネルギー密度があり、比較的有力な代替燃料になり得るのではないかと考えています。 私どもトヨタ自動車も、電気自動車の開発あるいは普及に決して手をこまねいているわけではありません。来年2012年には、テスラモーターズとの共同開発車、RAV4ベースですが、それから、右のほうは独自開発の小型のEV、この市販化を目指して開発を進めています。 ただ、皆さんもよくご承知のとおり、EVの普及に向けては、電池コストが非常に高い、航続距離が短い、充電に時間がかかる、充電インフラの問題 等々、まだまだ大変多くの課題があります。EVだけで現在の非常に多様な車の使われ方のすべてをカバーすることは、少なくとも中期的には大変難しいであろうと考えております。 従いまして、近未来の車の動力源は、何か1つに収れんしてゆくのではなく、移動距離や車両サイズ、使われ方によってすみ分けをすることになるだろうと考えています。 例えば、大都市の中心部など、ゼロエミッションの必要性が極めて高いエリア、あるいはまた、エネルギーインフラの整備が比較的容易な商用用途の車、同一ルート・エリアを繰り返し走る車につきましては、EVや燃料電池車の導入普及がインフラも含めて進んでいく可能性があると考えています。 EVのパワーと航続距離は、搭載する電池の量に比例、すなわちコストに比例しますので、車両サイズや航続距離によって、小さい車を短距離に使う場合はEV、比較的大型車を長距離の走行で使う場合は燃料電池車(FCV)といったすみ分けになっていくのではないかと考えます。 そして、そうした特殊な用途の車を除いて、大多数の車、車の使われ方をカバーできる現実解は、ハイブリッド車あるいはプラグインハイブリッド車ではないかというのが私どもトヨタ自動車の考え方です。代替エネルギーの問題、CO2問題への対応として、電気を利用した自動車を早く普及させることが重要ですが、そのためには圧倒的な環境性能とともに、お客様が本当に使いやすい車を提供していく必要があります。すなわち、航続距離、インフラの問題を克服し、価格面でもお客様の手の届く価格帯を実現する、私どもの現在の答えがプリウスのプラグインハイブリッド車です。 プリウスのプラグインハイブリッド車は、現行の プリウスのハイブリッドシステムをベースに、リチウムイオン電池を搭載し、電池の容量を拡大してい ます。外部からの充電も、急速充電等の特殊なインフラは不要で、一般的な家庭用電源から充電ができるシステムになっています。満充電からは約23キロのEV走行が可能です。スピードの面では100 5
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