平成19年度 研究成果報告会開催記録
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56司会:続きまして、当研究所の研究企画委員にもなっていただいています福井大学大学院教授の川上洋司先生にお願いいたします。川上洋司(豊田都市交通研究所研究企画委員、福井大大学大学院教授) ただいまご紹介に預かりました福井大学の川上です。私なりに気づいた点をお話しして講評とさせていただきます。研究報告に対する講評①地方都市の公共交通計画の方向性板谷和也②協働による交通まちづくり推進の過程田中智麻③住宅地の交通安全対策に関する検討橋本成仁④ヒヤリハットマップの作成について増岡義弘⑤交通円滑化及びTDMの取り組みについて山﨑基浩⑥道路交通所要時間等情報提供システムの開発の試み三村泰広TTRI H19研究報告発表会By 川上洋司(福井大学)地域に根ざした実践的研究(施策展開と研究との一体化、)人【移動主体(使い手)、原因者・被害者、計画策定・実施主体(つくり手)、・・・】に着目したアプローチ共通の特徴をあげるとすれば・・・ 今回ありました6点の発表に共通する特徴を挙げるとすると、豊田都市交通研究所が目指している交通まちづくりの実践的研究という一連の流れの中で、受託研究、言い換えれば、施策展開と研究との一体化、地域に根差した実践的研究という点です。もう1つは、「人」ということ。交通面から考えると、交通システムの使い手としての移動主体としての人であるとともに、交通のいろいろな問題の原因者と被害者としての人。また、交通のシステムづくりという計画策定であるとか、施策を実施する主体、つくり手としての責任をもっている人。それぞれの「人」を念頭に置きながら、いろいろな観点から取り組まれていると思います。切り口であるとか、テーマであるとか、それから、熟度においてまだ少し不整合なところがあると思われますが、そういう整理ができると考えられます。それでは、一つずつ簡単にコメントさせていただきます。 1番目の「地方都市の公共交通計画の方向性」。①地方都市の公共交通計画の方向性板谷和也*人々の生活活動、移動は行政圏で閉じているわけではない⇒利用者本位にたてば、現状と将来を踏まえた交通圏を計画圏として位置づけることは当然。そのための仕組みづくり(「財源と権限の確保」)は重要課題*地方都市の公共交通戦略・・・必要性からのアプローチ・生活のための移動(生活交通)サービスの公平な提供個々の行政(市町村単位)にとっての基本サービス●地域・都市構造の誘導(コンパクト化)、車との共存条件の創出(交通体系の抜本的再編)の基本要件としての公共交通広域的視点に立った戦略的展開が不可欠基幹的な幹線(軸)+交通結節点(拠点)これまでの地方都市の公共交通において軽視されてきた後者の観点から、交通圏の中で公共交通をどう位置づけるか?ご指摘にもありましたように、人々の生活行動や移動は行政圏で閉じているわけではありませんので、利用者本位に現状と将来を踏まえた交通圏を計画圏として位置づけていかないといけません。そのための仕組みづくりということで、財源と権限の確保は重要課題だと思います。 また1つには公共交通の性格として、不特定多数の人が利用できるという側面がありますので、生活者のための移動を公平に提供することが必要です。地方都市における公共交通戦略については、現在、コミュニティバス等が浸透し始めましたが、個々の行政単位、市町村単位の基本サービスとして位置づけることが重要だと思います。 もう1つの側面として、公共交通は大量輸送性等々の性格を持っているため、地域・都市構造の誘導、特にコンパクト化を目指すときの誘導の条件づくり、あるいは車との共存条件の創出といった交通体系の抜本的再編の基本要件としての公共交通という観点で公共交通を位置づけていくことが現在、求められています。その中には広域的視点に立った
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