平成18年度 研究成果報告会開催記録
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--18ことです。ないと困るわけです。それが車なのか、車を超えた“新しい車”なのか、そこは問題になろうかと思います。現在のところ、車はほかに比べれば比較的安く、個人的に利用しやすい交通手段ですが、みんなが一度に使うと大変な問題が起きます。その問題を解決しながら、どういうふうに車のアクセス性を生かした快適な都市をつくっていくか、これが非常に大きな課題です。 現在の都市交通の課題への対応。よく言われる車依存の問題に加えて、最近は少し新しい課題も出ています。社会経済動向への対応で、グローバル化と経済の低迷、人口減少・高齢化、市街地の縮減。人口が減ってきますと、市街地をいかに小さくしていくかというのも大きな課題です。市街地がバラバラのままですと、交通の問題だけではなくて、公共サービスの費用も大変になります。費用対効果といいますか、どういった形で市街地をうまく整理して固めていくかという点もこれからの課題だろうと思います。 それから、新たな課題ということで、地球温暖化の問題があります。これはやはり自動車の持つ課題の1つです。そういうことを含めて、最近ではサステナビリティ(持続可能性)という言葉が使われます。地球温暖化を含めた環境問題が一番ベースですが、2番目に経済・財政面での持続可能性もあります。経済活力、経済の繁栄を維持しながら、どういうふうに都市を持続させるか。3番目の社会的な面での持続可能性。交通との関係で言えば、車を使えない高齢者、障害者が病院へ行けない、仕事に就けない、社会活動に参加できないことにより格差が生まれます。格差は社会の不安定さを増します。これは非常に大きな課題です。今、失業など、非常に深刻な社会的格差の問題に交通アクセスが関連していることが分かってきました。 それから、11頁の配布資料の持続可能性への対応①の環境面は人間の健康と安全です。ヨーロッパ・アメリカでは、車依存と病気の関係が問題になっています。歩かない、運動不足による肥満。肥満と運転量は本当にきれいに比例します。びっくりするほどです。やはり歩かないといけないということで、健康という面から車に頼りすぎることに対する反省が広がっています。公共交通を利用すると、特に東京は地下鉄関連で階段がたくさんあるので運動にもなります。習慣的に車という特定の交通手段に頼ることによる健康への影響も心配されています。交通安全に加えて、そういう問題もあるということです。 新しいアプローチということでは、健康の問題から環境の問題、経済の発展まで、全体を統合的に見るパッケージアプローチという言い方をしています。今までのように交通の問題だけを考えるのではなく、豊田市でいいますと、経済的な活力、元気があって、商店街も元気があり、住んでいる方もハッピーになるような交通政策。そういうもの全部に交通は関連しているという見方を前提にした統合的アプローチが重要だということです。 また、その実現のためには、研究だけでは駄目で、やはり市民参加。ステークホルダー(利害関係者)、つまり、市民や商店の皆さん、事業者の皆さん、企業の皆さん、みんなが合意して一緒にやっていかないといけません。そのプロセスなり、その仕組みをどう考えるかというのも非常に大きな課題だと思っています。 豊田市の持っている財産のひとつは、トヨタ自動車による車技術、それに関連するいろいろな技術、交通のベースとなる技術があることです。それから、もう1つは団塊の世代。トヨタ自動車をはじめ、いろいろなところに勤めた方に会社の中や外で得た知識と経験を地元へ還元していただく。それを発掘しながら、うまくオーガナイズしていくのも非常に大きなテーマであろうし、特に豊田だからこそいろいろな展開が期待できると思っています。そして、プリウスその他に代表される環境にやさしい車、先進的な車にふさわしいまちづくりもあわせてやっていかないといけません。車だけ先行してもどうかなということです。 そのためには、世界のいろいろな事例を勉強することが大切です。前回の基調講演のときには、都心でのいろいろな試みということで、ソウルの清渓川
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