平成18年度 研究成果報告会開催記録
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--14ことがわれわれに問われています。そして、新しい試みの中で役立つもの、ほかの地域でも使えるものを含めて開発していきたいと思っています。 豊田市の地域は今回の合併により非常に拡大しましたから、日本の大都市の問題から地方都市の問題、それから、中山間、山間部の問題といった全国のさまざまな地域での住まい方の問題をおおかたかかえているといってもいいかと思います。ですから、問題の領域が一挙に広がった中で、いろいろな実験を通して、これはモデル実験をやるという意味ではありませんが、交通まちづくりの一番進んだ形のものを豊田市で実現していければと思っています。 3番目に、全国世界の情報発信と書いてありますが、ここで蓄積した知識、新しい考え方、新しい仕方の情報拠点として、ここから発信していきたいと考えています。あるいは、豊田市や私どもの研究所が始めたこと以外の役立つ試みなどもここで集約して、ここから全国へ、あるいは、これから急激に発達していく中国の都市や東南アジアの都市を含めた全世界へ情報発信したいという希望を持っています。まだそんな状況にはなっていませんが、当初からの1つの大きな希望分野です。 平成3年にこの研究所がつくられたときのことを振り返ってみますと、当時はグローバルな国際的な活動を視野に入れて、研究内容もさらに大きく発展させようという予定でした。けれども、その後、経済状況その他の事情により、必ずしも希望どおりにはいっていません。しかし、これだけのスタッフがいる研究所はほかにはない、地方都市というレベルでは最高水準の調査研究資源を持っていると自負していますので、これをどう活用していくかが課題だと考えています。 実は、この数年間、研究体制、研究所の運営に大変苦労してきました。平成15年4月に、副所長であったり、研究企画委員という立場から研究所長となってからは、研究内容を集約しながら具体的な成果を出すようにさまざまな試みをしてきました。司会の安藤研究主席が来られてからは、民間での研究体制のノウハウを取り入れながら研究所の仕組みを再考し、実践しているところです。 研究所の内部的には、ことし18年4月から、3年間という時限付きですが、新たに専門的な若手が3人ほど加わりました。人員を強化しながら新しい問題に対応する仕組みができています。お手元の年表からも、この数年間、研究テーマが増え、その内容も深まっていることが間接的に見えているのではないかと思っています。新しい研究者を含めた新しい体制が今、始まったばかりですが、来年、再来年、ますます充実させるよう努力していきたいと思っています。 次に、主要な研究分野です。ITS、高度道路交通システムを使ったインテリジェントな交通システム、豊田市は「かしこい交通社会」と表現していますが、それが1つの目標になっています。そのときの技術的なサポート、情報技術の活用が非常に大きな研究分野となっています。これは公共交通の問題や高齢者・障害者の交通問題、交通渋滞への対応、交通安全にも役立つ基本的な技術だと思っています。ITS技術の活用については市のほうで非常に頑張っておられますので、研究分野でもそれをサポートする形になっています。 2つ目の公共交通は、車社会の1つの大きな課題です。車を持たない人、高齢者、車での移動に障害がある方を含めた交通弱者、交通困難者の交通手段として、あるいは、運転免許を取れない小学生、中学生、高校生の交通手段として、あるいは、普段元気なわれわれも病気にかかった場合などの交通手段として、公共交通は非常に重要です。なんらかの公共交通手段がないと、病院にも行けない、学校にも行けなくなります。モビリティ(移動性)といっていますが、最小限の社会参加に必要な交通サービスをどう確保するか、効率的、かつ、車と同等以上のサービスをどう確保するか、これは世界的に大きな課題です。そういう意味で、公共交通、あるいは、今はまだ公共交通とはなっていませんが、少人数を移送するシステムもやはり大きな研究テーマではないかと思っています。 3つ目は交通安全です。当然、従来からの大問題

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