平成17年度 研究成果報告会開催記録
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-4- さんが「ああ、それはいい。その方向に行こう」「私もそのために何ができるのかしら」というレベルまで行くと、非常にいい形になります。その中で、分からない点、客観的に分析したほうがいい点、あるいは合意形成を図るためにワークショップなどをやるといったことで、研究所が役割を果たすというのが理想的な形だと思います。 このようなまちづくりで有名なのは札幌都心の交通計画です。創成川通りのアンダーパス化と駅前通りの地下歩道について都市計画決定されていたのを、市長選で選挙公約として市民参加を約束し、もう一度市民の意見を聞くことを約束した候補者が選ばれて、千人ワークショップを実現しました。千人ワークショップというのはタイトルですから、実際には七百何十人の参加であったのですが、そのワークショップから提案された意見を市長が委員会に諮って答申し、それを議会で議決して進むというようなことをやりました。これはわが国でも初めての例ですから、改善点はいろいろあるのですが、積極的に展開されていて、交通まちづくりガイドというような形で成果をうまくまとめています。非常に参考になると思います。目標があって、PDCAサイクルでプランを立てて、施策を展開し、点検・評価して、見直す。これを繰り返していくことで、生活の質の改善が図れるのではないかと思いますし、必要だと考えています。 市民を巻き込むことの是非については、批判も含めいろいろな意見があります。市民意識は単なる要望づくりにとどまるというように批判的な評価をしたり、誤った判断を下す危険性を抱えていることもあります。これも間違いない事実です。 対案として、観客民主主義から参加民主主義へといういい方もあります。ただ行政がやっているのを思うとおりにならないから嫌だな、行政は役に立たないわというように、観客として傍観しているのではなくて、自ら参加して、目標はこうするべきだ、構想はこうしたほうがいい、そのお金が必要ならこんなふうにしようということを一緒に考える方向に行くのが望ましいのではないか、それでないと生活の質の改善に結び付くような提案はできないのではないかと言うものです。従来のシステムのように、必要な情報を与えられずに費用も住民負担にはね返らない施策については、住民が要望型になるのは当たり前だったと思いますが、市民自らが豊田市の交通のことや環境のことに参加することによって、将来の自分たちの負担が減ることに気づくという形になったら、参加民主主義へ移るのではないかということです。 交通まちづくりの重要性は、地域間の競争が高まる中で、豊田市が地方都市の中でナンバーワンだと言っていくためには、豊田の人たちが豊田のまちをどう考えるのか、豊田の持っているよさの何を残して、悪さの何を改善するのか、つまり地域の持つ遺伝子を発掘して、いいところは残す、悪いところは改善するということをみんなでやっていく必要があります。 これは選挙で選んだ人に任せっきりというわけにはいきません。選挙は毎日毎日あるわけではないので、何年かに1度選んだ人だけに任せるのではなく、いろいろな局面で市民参加して意見を言って、それを取り上げてもらう。こういうことが自主的に多発するということが重要だと思います。 例えば中心市街地では、市民と商店街、都心のNPOでもいいのですが、交通の事業者がいま「地域遺伝子」を発掘する「地域遺伝子」を発掘する第二部役割地域の歴史、文化、風土に根ざした「魅力的な街」を造り、育てるために、市民や企業との協働によって、将来ビジョンの構築、計画立案、あるいは、社会実験や本格実施を、柔軟な姿勢で進める必要がある。まちづくりへの市民参加を通して、コミュニティによって受け継がれた「地域遺伝子」の発掘が可能である。

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