(1)人間特性と運転行動を考慮した危険事象の推定 (2)運転モニタリングの方法論に関する考察 ⚫ 個人属性や認知機能,視覚機能,ドライバーの交通環境に関する情報からRDEの推定モデルを構築し,RDE件数を予測することによって,機能変化に伴うRDEの違いを模擬することができた. ⚫ 構造解析から,認知機能等の機能的側面と運転に関する意識や態度とRDEとの位置関係が並列構造で説明できることを示し,RDEの発生に関与するドライバーの特徴を確率推論によって確認した. ⚫ 運転モニタリングデータはデータ収集期間によって性質が異なることが示唆されたため,データの使用目的によってデータ収集期間を設定することの重要性が確認された. ⚫ 走行距離は時期によって変動するが,RDEはデータ収集時期の影響を受けにくいため,時期を横断してRDEは比較可能であることが示唆された. 運転モニタリングに関する研究では,データ収集期間は一様ではなく,データ収集時期についてもあまり言及されていない.本分析は,それらの研究で言及さ 5.おわりに 32 日本では,高齢ドライバーの交通事故低減対策の一つとして高齢者講習が設けられ,ドライバー自身に運転能力や技能水準を把握する機会を提供している.しかし,今後も講習の受講を希望するドライバーが増加することを考えると,その一部を別の手段で補ったり,運転相談などの場を活用したりすることによって,現場や受講者の負担の軽減を図ることが重要である.本研究では,運転モニタリングデータを用いて危険事象,ここではRDEを推定することにより,高齢ドライバーの運転傾向把握の可能性を探った.さらに,その分析の過程から,運転モニタリングデータに関する特徴についての知見が得られた. いずれの分析でも,投入した変数のうち,認知機能や視覚機能など,高齢者講習等で収集できる情報と類似点があるため,本研究のRDEの推定に転用することができれば,現行の情報の有効活用につながるだろう. れなかったデータの特徴を明らかにするものであり,今後の運転モニタリングの方法論に関して貴重な情報を提供するものと考えられる.
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