高齢ドライバーの人間特性と運転行動を考慮した危険事象の推定
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5 2019年から2022年までの交通事故統計 (警察庁) から作成 いが異なることが指摘されている12).そのため,本研究においてもより強いX軸加速度を閾値としたRDEのみを分析に使用すれば,交通事故統計に近い傾向が得られたかもしれない.ただし,その場合には観測数が少なくなることが問題となる.したがって,今後はRDEがもつ意味合いを明確にし,運転傾向を把握する指標としての妥当性を確立する必要があるだろう. 二つ目の可能性は,集計単位による違いである.交通事故の月次統計は個人を横断した個人間の集計値である.それに対して,本研究のRDEは個人のデータを縦断的に集計した個人内の変動を示している.交通事故発生と違反検挙のメカニズムには,同じ心因に根源を求めることができ,交通違反のあるドライバーは,交通事故を起こす傾向があることが指摘されている13).つまり,時系列的な個人の追跡データには一定の運転傾性を含むことを意味している.これは,個人を特定しない社会全体の傾向を評価する交通統計とは異なる性質であり,さまざまなドライバーの運転傾向を解明するうえで重要な視点であるといえよう. 以上の分析から,運転モニタリングデータにおけるデータ収集期間と時期の違いによるRDEの特徴が得られた.この特徴を考慮すると,データの利用目的によってデータ収集期間と時期を設定することが重要であると考えられる. データ収集期間については,時期を横断してRDEの発生水準は変わらないことから,現在の運転傾向を把握することを目的とするならば,2週間程度の短期間でも12か月の長期間でも同等の情報が得られると考えられる.しかし,運転モニタリングデータをより高度な分析やモデル構築等に活用することを目的と30 図 4-3 交通事故統計の月次変化5

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