4-3.考察 29 本分析により,データ収集期間と時期という観点から,運転モニタリングデータの特徴に関する知見が得られた.データ収集期間については,RDEの発生水準は,時間に対する増加ペースの傾きに個人間の差異はあるものの,個人内では時間を縦断して一定であることがわかった.しかし,その一方で,回帰分析の結果から,データ収集期間によってモデルの構成と予測値が異なることが示された.この違いは,データの質の違い,特に個人差の表現によると考えられる.RDEは通常時間の経過に伴って増加するカウントデータであり,累積値である.そのため,常に少ないRDEを維持しているドライバーと,時間と共にRDEが一定の比率で増加するドライバーとを比較すると,短期間では僅差でも,時間が経つにつれてその差は拡大し,違いが強調される.実際に,表4-2のRDEの範囲をみると,2wの最小値と最大値の差は12mでは25倍に増大し,12mは個人の特徴がより明確に表されたデータとなっている. このような特徴を考慮すると,12mデータで作成されたモデルがより各ドライバーの特徴を反映していると考えられる.そこで12mモデルの予測値を見本として他のデータ収集期間の予測値と比較すると,3mと6mの予測値は12mの近くに位置するが,2wと1mは12mの予測線から離れている (図4-2).このことから,データ収集期間の特徴は1mと3mを境界として大別され,3か月以上収集されたデータは比較的個人差が明確な長期データに分類できるといえよう. また,時期の違いを検討するために,月ごとの走行距離とRDE件数を比較したところ,走行距離についてのみ月ごとの差異が認められた.特に,1月や2月といった冬期の走行距離が短いことから,冬期の交通条件の悪化に対する対処行動としの運転制限の生起が示唆された.しかし,条件が一定ならば,走行距離が短くなると,ハイリスクな場面への遭遇可能性が低くなり,RDE件数も減少すると予測されるが,本分析では月によるRDEの違いは認められず,一定であった.冬期は交通条件が悪化し,リスクが上がるという前提で考えると,元々他の時期に比べてRDEが発生しやすい環境であり,それを運転制限の成功によって抑制し,他の時期と同水準に引き下げたということが推測される.もし高齢ドライバーが運転制限を適用しなかったら,RDE件数は他の季節よりも多くなったかもしれない.本研究の結果は,高齢ドライバーに限らず,ドライバーが自身の運転技能や環境を考慮して適切に対処行動を採用することが安全運転に寄与することを確認するものであるといえよう. その一方で,警察庁の交通事故統計では,1月や3月,12月の交通事故件数は増加する傾向にある (図4-3) と言われており,本研究のRDEとは異なる傾向である.その理由として,2つの可能性が考えられる.一つ目は,交通事故とRDEという指標の違いである.RDEは,検出する閾値によって指標としての意味合
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