高齢ドライバーの人間特性と運転行動を考慮した危険事象の推定
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社会への貢献, 報告,技術的特徴等 報告者:山岸未沙子 研究分野 業務類型 研究題目または 報告書タイトル 研究の背景・内容 研究結果・ 得られた知見等 研究成果 所内の担当者氏名・ 担当者 協力先名 問題点・課題・今後の研究予定・その他 *予定含む 2022年度 自主研究概要 1暮らしを支える交通,2.都市空間を創出する交通,3.交通の安全・安心 1.調査,2解析,3.政策検討,4.その他 コロナ禍が豊田市の都市交通に与える影響のモニタリング 高齢ドライバーが関わる交通事故の低減は重要な社会課題である。その対策の一つとして運転免許証更新時には、運転能力や技術水準をドライバー自信に把握させることを目的とした高齢者講習や認知機能検査が設けられている。しかし、その講習を担う現場の資源にはほとんど変化がなく、受講者の増加に対する負担増や効率化が課題となっている。そのため、運転免許証更新手続きに頼るばかりではなく、定期的に運転能力や技術を把握し、運転について見直す機会を設けることが重要であると考える。日常の運転の記録 (運転モニタリング) はその手段の一つといえるが、一般のドライバーが運転モニタリングデータから運転の傾向を読み取ることは容易ではない。 本研究では、高齢ドライバーに関する様々なデータから運転傾向を把握するために、危険事象の発生可能性に着目し、人間特性データや運転行動データによる危険事象の推定を試みた。危険事象は危害を引き起こす可能性のある事象を指すが、急減速事例 (Rapid Deceleration Event: RDE) は加齢による機能変化と関連があり、交通事故の代替指標としても期待されていることから、本研究ではこれを危険事象の指標とした。 分析には、名古屋大学COIの高麗者運転特性データベース (DAHLIA-DB) を使用した。DAHLIA-DBに登録されている高齢者のうち、人間特性データと運転行動データをもつ高齢者84名を分析対象とした。RDEは、ドライブレコーダを用いて収集された運転モニタリングデータから抽出された。抽出の基準は、加速度と事象発生に関わる対象物の有無であり、強い急ブレーキに起因して抽出されたイベント記録から他車、歩行者、自転車、構造物、信号などのきっかけがある事例を用いた。人間特性データとしては、視覚機能や認知機能、運転に関する主観評価を用いた。運転行動データとしては、走行距離などの運転習慣や居住地の交差点数などの地域の情報を使用した。これらのデータを用いた回帰分析や構造解析を行い、RDEに関連する要因の検討や発生可能性の推定を試みた。 RDEと個人属性や認知機能、視覚機能、運転に関する意識、走行距離などの関連性を示し、各要因の成績を操作することによって、RDEの発生可能性を推定することができた。 RDEを交差点の標識の有無などで分類した構造解析により、要因間の関係性を視覚化し、発生水準が推論できる可能性を得た。 分析の過程で運転モニタリングデータを精査した結果、Naturalistic Driving Studyを含む運転モニタリングの方法論に関する知見が得られた。 認知機能や視覚機能、アンケート結果など高齢者講習でも得られる情報から高齢ドライバーのRDEの発生可能性を推定した。 運転モニタリングの方法論に関する提案。 山岸未沙子 名古屋大学未来社会創造機構人間加齢特性研究室 (DAHLIA-DBの維持管理) 青木宏文教授 RDEに関して、個体差を組み込んだ解析手法やデータ分布を考慮した解析手法についての再検討。 各分析から得られた知見を用いた具体的な利用方法の提案。 運転モニタリングデータの活用推進方策の検討。

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