高齢ドライバーの人間特性と運転行動を考慮した危険事象の推定
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Driving behavior Capacity to driving safety Vision 18 Physical function また,認知機能や対処行動,運転スタイルに着目して確率推論を行ったところ,認知機能成績の高いドライバーはRDEが少ないという関係性が確認された.特に,RDE全件と信号のある交差点および交差点以外でのRDEとの間にMMSEやTMTといった認知機能成績との関係性が認められたことは,さまざまな場面の速度管理の巧みさを認知機能が媒介する可能性を示唆しており,運転技能にとっての認知機能の重要性を確認する結果となった. また,対処行動の「道路環境からの情報獲得をしない」とRDEとの間に関連性が認められたが,これは特に信号のある交差点と一時停止標識のある交差点のRDEに認められた.これらの場面では,交差点を知覚してから信号や一時停止標識などの標識の情報を道路環境から取得・認識し,適切なタイミングで減速や停止をすることが求められる.そのため,「道路環境からの情報獲得をしない」という行動は,さまざまな情報処理が求められる交通場面において,処理する情報を制限して運転時の認知資源を確保する効果を期待した対処行動であると考えられる.しかし,そのような効果がある一方で,この対処行動は,信号や標識といった重要な対象物にも適用され,情報獲得が制限される可能性がある.それが,信号や標識のある交差点のRDEとこの対処行動との間の関係性としてあらわれたものと考えられる.したがって,この対処行動を実施する傾向のあるドライバーについては,特に信号や標識のある交差点における十分な目配りや運転支援によるサポートにより安全運転を支える必要があることが示唆される. さらに,DSQの「運転に対する消極性」が標識のない交差点のRDEに関係することが示された.確率推論の結果から,より運転に対して消極的なドライバーがRDE「少ない」確率が高いことが示されたが,同時に「運転に対する消極性」は月間走行距離にも関与し,より消極的なドライバーは月間走行距離が短いこ図 3-5 Ansteyらの理論的モデル Self-monitoring and beliefs about driving capacity Cognition

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