(1)RDEの件数を推定する量的分析 図3-4aから,TMT Part Bの成績が「高い」場合と「低い」場合のRDE「多い」と「少ない」の確立を比較すると,TMT Part Bの成績が「高い」場合,つまり視覚情報処理能力が「高い」場合に比べて,視覚情報処理能力が「低い」場合にはRDE全件と信号のある交差点でのRDE「少ない」の確率が低いことが示された.これは認知機能成績 (視覚情報処理能力) とRDE減少との関係性を示す結果である. 3-3.考察 16 RDE件数を目的変数としたポアソン回帰分析を行い,回帰モデルを構築した.その結果,認知機能や視覚機能をといった運転適性に関わる変数と交差点数な次に,図3-4bは,対処行動アンケートの下位尺度である「道路環境からの情報獲得をしない」に着目した結果である.「道路環境からの情報獲得をしない」は,標識よりも周囲の環境を判断材料にすることや信号が少ない道を選択するといった行動から構成されている.これらの行動の実施に「当てはまる」,「どちらでもない」,「当てはまらない」の3つの条件のうち,「当てはまる」,「当てはまらない」におけるRDEの確率推論を行った.その結果,「当てはまらない」 (情報獲得をしないに肯定的) に対して,「当てはまる」 (情報獲得をしないに否定的) に設定した場合は,信号のある交差点と一時停止標識のある交差点のRDE「少ない」の確率が高いという対処行動とRDEの関係が示された. 最後に,図3-4cのDSQの「消極性」とは,「公共交通機関の利用」や「裏道よりも信号のある整備された経路の選択」から構成された「運転に対する消極性」である.元々「あてはまらない」の回答は少なかったため,「やや当てはまる」と「当てはまる」についてRDEの確率推論を行った.その結果,標識なし交差点のRDE「少ない」の確率は,「やや当てはまる」よりも「当てはまる」の方が高いという運転スタイルとRDEとの関係が示された.さらに,「消極性」は月間走行距離とも関連があり,同様に確率推論を行うと,「当てはまる」 (消極性の程度が強い) よりも「やや当てはまる」 (消極性の程度が弱い) 方が月間走行距離「多い」の確率が高いという結果が認められた. どの交通環境に関わる変数が有意となった.これらの項目のうち,認知機能や視覚機能は,高齢者講習の運転適性検査や認知機能検査で測定している情報と類似している.したがって,RDEの発生可能性においても,運転免許証更新手続きで確認されるドライバーの能力は重要な要素であることが確認された. また,回帰モデルを用いて,走行距離グループに着目した予測値を算出したところ,走行距離の短いドライバーが,走行距離の長いドライバーよりもRDE件数が多いという予測結果が得られた.これはLow-Mileage bias (LMB) 7)を反映し
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