(1)分析方法 3-2.RDEの発生有無を推論する質的分析 RDEに関わる要因間の関係性を探索し,RDEの発生水準の推論を行った.構造解析は,RDEの発生に関連する変数を探り,RDEに至る変数間の関係性を視覚化することのできる手法である.あらかじめ仮定したモデルを検証したり,モデルの構造を探索したりすることができる.本研究では,RDEを上位概念としてたモデルを仮定し,たとえば成績の高低といった各変数の水準によってRDEの発生水準 (発生有無) の確率推論を行うことによって,事象の起こりやすさを検討した. RDEを上位概念としたモデルを構築するために,これまでの運転行動モデルに関する文献調査を行った.交通事故を上位概念とした研究によると,視覚機能12 次に,構造解析によるモデル構築 (ベイジアンネットワークモデル) を通して,構造解析には,ベイジアンネットワークモデル構築支援ソフトBayolinkS (株式会社NTTデータ数理システム) を用いた.この時,すべての変数を離散化する,つまりRDE件数ならばRDE件数0件を無し群,1件以上を有り群とするなどカテゴリカルデータに変換した.また,この構造解析は,回帰分析と異なって,複数の変数を目的変数とみなすことができる.そこで,すべてのRDE件数を目的変数として上位概念に配置するのに加えて,一時停止標識のある交差点,信号のある交差点,標識のない交差点,交差点以外といった場面ごとに集計したRDEもモデルに投入することとした. や認知機能といった機能との関係性が図示され,機能が交通事故に寄与することが示されている5).同様に,運転に関する意識や態度,ドライバーの特性が交通事故や危険運動に関連することが明らかにされている6).しかし,それぞれ別々のモデルで表現されており,機能と意識や態度との位置関係については不明瞭である.また,RDEを上位概念として機能と意識や態度との関係性を明らかにした研究も少ない. そこで本研究では,RDEと機能,意識や態度との関係性を検討するために,先行研究を参考に,表3-2に示す変数を用いて,図3-1のような機能と意識や態度との位置関係の異なる2つのモデル,並列構造 (図3-1左) と階層構造 (図3-1右) を仮定した.もし,機能と意識や態度が独立にRDEに関連するならば,両者が並列に位置する並列構造の予測性能が高くなるはずである.一方,機能が意識や態度を形成してRDEに関連するならば,機能と態度が階層的に配置される階層構造の予測性能が高いと考えられる.
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