高齢ドライバーの人間特性と運転行動を考慮した危険事象の推定
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7 参加への同意が得られた場合は,取り外したドライブレコーダを自家用車に取り付け,データ収集が開始された.このような中断,新規加入により,データの記録期間は参加ドライバーによって6か月から1年以上と差異が発生している. ドライブレコーダから得られたデータは,常時録画,履歴記録,イベント記録の3つのモードで記録された (図2-2).常時録画は,エンジンオンからオフまでの1トリップ分の映像とセンサデータがまとめて収録されたものである.1トリップ分の連続的な映像データを含むため,容量が大きく,おおよそ1か月程度の記録が残されている.ただし,過去のデータは新しいデータに上書きされるため,SDカード取り外しの直近約1カ月のデータが保存された. 履歴記録は,1トリップ分の日時,加速度,GPS情報などの運行記録をまとめたテキストデータであった.常時録画と異なって映像データを含まないため,データ容量が小さく,SDカードを3か月ごとに交換してもほとんどの参加ドライバーのすべての運行記録が得られた.ここから,記録期間中の走行距離や走行日数を集計して運転習慣を得ることができたため,本研究でもデータの選別や走行距離の計算に使用した. イベント記録は,急激な加速度変化が生じた時点の前後20秒間を自動的に記録したものである (検出基準はドライブレコーダの仕様に依存).常時録画のように映像が記録されるとともに,日時,加速度,GPS情報のテキストデータも出力された.イベント記録は,20秒間の抽出データであるため,履歴記録と同様,たいていの参加ドライバーについて3か月間分の記録が保存された.ただし,イベント記録には運転挙動とは無関係な事例,たとえばドアの開閉や道路の凹凸などによって強い加速度変化が生じた事例も含まれた.そのため,目視によりすべてのイベント記録を精査し,急減速に起因する事例 (RDE) のみに絞り込んだ.RDEの検出については,多くの事例を確保するために加速度の検出閾値を低めに設定する場合もあるが,検出閾値が低いと交通事故の代替指標としての意義が薄れることが問題視されている.そこで本研究では,Near-crash eventsに近づけて,安全運転の指標としての意義を高めるために,他車や自転車,歩行者,構造物などとの接近・接触に伴う急減速,信号前での急減速といった原因となる対象物がある事例を選別し,これを本研究のRDEとした.

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