これからの「生活道路」空間マネジメントに関する研究
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418,2019 2) 長嵐陽子・中井検裕・中西正彦:コミュニティ・ゾーン形成事業における計画内容と住民意見に関する研究,都市計画論文集,38.3,pp.457-462,2003. 3) 江夏量・外井哲志・坂本紘二・菊池康昭・梶田佳孝・末久正樹:住民参加型の道空間づくりにおける合意形成のプロセスについて,土木計画学研究・論文集,22,pp.231-46 ない,別の要因―例えば,先に触れた地域の道路管理者や地域住民の特性―などの影響が潜在する可能性を予感する.この点について,今後分析を深める意義は少なくない. さらに,今回の分析で,特に住民発意が多くなったものと予想される2017年以降で既存整備の近隣地域での整備が進んでいる事実から,住民発意のポテンシャルが高まる地域の可能性が示された.これは,住民発意による整備によって,視覚的に目立たせる入り口部の対策や物理的デバイスなど,わかりやすい形での整備が積極的に行われたことが,その近隣地域の住民の目に留まり,ゾーン30の整備要望につながった可能性を示唆する.いわゆる,山岡ら5)が指摘している「事業の身近さの重要性」の結果を支持するものであろう.無論,この原因の考察については,推察の域を出ていない.今後のさらなる分析の必要性は高いといえる. 5-2.生活道路マネジメントに向けた住民へのアプローチ方法 地方都市に住む住民は,生活道路の価値として,安全・安心であること,高齢者や子供,障害者といった交通弱者の使いやすさ,通りやすさを重視していた.他方,これらの価値に対する意識の高さが,当該道路の維持管理における当事者意識の高さと相関するとはいえず,むしろ,行政主導で維持管理すべきとする意向の高さと相関していた.この結果を鑑みると,住民発意が要件となるようなゾーン30プラスなどの生活道路対策を推進するにあたって,単に整備による安全,安心の向上や,弱者対策を標榜したアピール展開を行うことの効果が限定的であることを示唆している.すなわち,住民は当該価値を重視はしている一方,いくらその価値を重視していても,当該価値の向上(いわゆる維持管理の実施など)に際して当事者意識をもって関与しようとは考えていないことが推察される.よって,ゾーン30プラスなどの対策を広く普及させていくうえでは,直接的な効果といえる安全・安心の向上や交通弱者の利便性向上という観点だけでなく,例えば,地域のにぎわいにつながるといった副次効果の観点にも言及したアピールを展開することが重要であるかもしれない. 参考文献 1) 薬袋奈美子:欧州におけるボンエルフの現状,都市計画論文集,17(4),pp.413-

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