これからの「生活道路」空間マネジメントに関する研究
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5.生活道路空間マネジメントの在り方に関する考察 3章,4章の結果を踏まえ,生活道路空間の目指すべき姿の実現にかかる課題と今後の在り方について考察する. 5-1.生活道路マネジメントに向けた検討プロセス-ゾーン30を事例に これまでの整理から,自治体によって,ゾーン30の整備状況に差が生じており,それは,警察発意,住民発意といった発意プロセスの差が反映されている可能性が示唆された. 目標年であった2016年度までは,警察発意により大きく整備が進んできた.2016年度末以降,ゾーン30整備数は8割減,整備を進める自治体も7~8割減という数値は,いかに警察発意によるゾーン30整備推進の力が大きかったかを物語る.他方で,道路管理者の協力が不可欠である対策,特に物理的デバイスの導入には課題があったものと推察される.事実,愛知県における物理的デバイスの導入がなされているゾーン30は全体として1割程度であるといった指摘がなされている.今回のヒアリングにおいても,表 3-4に示すように,道路管理者として,積極的にゾーン30における物理的デバイス整備を推進できる立場になかった旨の発言があった.主体的に進められないその立ち位置としての困難さがあったものと推察する.この課題を克服する点において,住民発意による整備推進の重要性は,大きいものと示唆される.先に整理したように,A市,C市でみられた住民発意によるゾーン30整備箇所は,積極的な対策が打たれており,そこにはハンプや狭さくなどの物理的デバイスも含まれている.ゾーン対策の推進に関しては,先に示したように,住民意向やその介入が重要といった指摘は多い1)2)3)4).ゾーン30においても,地域住民が介入することによって,より効果の期待できる対策が推進された可能性が高いものと推察できよう. この住民発意のゾーン30整備について,これまでの整理からも,警察庁による目標年(2016年度末)を閾値として大きく表出した可能性がある.すなわち,目標年以降も整備が進んだゾーン30は,住民発意による可能性が高いという点である. 今回の分析で,市部では,人口系指標と交通安全関連指標で目標年以降の整備傾向に差が生じていた.これは,自治体規模の影響であるともいえ,規模の大きな自治体ほど,町会などの多くの住民組織を包含しており,そこから比較的多くの住民による発意が生じてくるというのは,自然な結果であろう.むしろ興味深いのは,区部で地域特性の差が生じていないという点である.これは,地域特性の状況で45

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