43 ・生活道路,幹線道路に限らず,道路の価値に対する意識が比較的高いのは,「交通事故にあう危険性が低いこと」,「犯罪にあう危険性が低いこと」といった安全・安心に関わるものであり,「空間ににぎわいがあること」「小型電気自動車やトラクターなどの速度の遅い車両が通りやすい,使いやすいこと」は相対的に価値に対する意識が低いことを示した.また,生活道路では,「こどもが通りやすい,使いやすいこと」の価値を比較的高く意識していることを示した. ・生活道路では,交通弱者の通りやすさ,使いやすさについて,郊外>中心市街地>中山間地域の整備地域の順で価値を高く意識していることを示した. ・道路の価値に対する意識と維持管理方法における意識の相関関係をみた結果,生活道路,幹線道路に限らず,いずれの価値でもそれを重視する方ほど,行政が維持管理を行うべきであるとの意向があることを示した. ・当事者意識をもって維持管理を行うと回答した方は,道路の種別に限らず,つながりや,にぎわい,トラクターなどの低速小型自動車の使いやすさ,通りやすさに価値を置いていることを示した. ・生活道路で,安全・安心,自動車の通りやすさ・使いやすさの価値を重視している,特に郊外部の道路においては,交通弱者の通りやすさ・使いやすさの価値を重視していることが,地域住民として当事者意識をもって生活道路の維持管理を行おうとする意識の高さとは相関があるとはいえないことを示した. 今後の課題として,今回の結果は,回答者の個人属性や活動状況といった,道路の価値に対する意識への影響が予想される条件の違いに言及できていない.本成果の一般性を高める上では,今後追加分析を検討していく必要性は高いと考える. 注 [1] 例えば,愛知県豊田市では,ゾーン30の推進においては行政側からアプローチをかけるのではなく,住民代表等からの要望を受けて検討を進めるといった方針を採用している. 参考文献 1) 竹本亨: 少子高齢化が市町村の道路予算にもたらす影響, 帝塚山経済・経営論集, 30, 15-29, 2020. 2) 兵藤哲朗: 需要と供給の動向を見据えた道路の維持管理・更新, 道路建設, 25/7, 17-20, 2013. 3) 岩城 一郎: 維持管理のこれまでとこれから~社会インフラを例に~, コンクリート工学, 54, 5, 582-583, 2016. 4) 川口 潤, 武田 裕之, 加賀 有津子: 道路維持管理に対する住民の評価と情報開示がもたらす影響, 日本建築学会計画系論文集, 82, 732, 459-467,
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