32 住民に対して「維持管理に対して住民が抱く評価」「評価を規定する要因」の把握を行っている.結果,住民は市道維持管理の重要性は理解しつつも,政策としての関心度は相対的に低いこと,維持管理への評価に対しては,行政への信頼度や道路維持管理への意識が大きな影響を及ぼすこと,市道の維持管理は行政と住民とが協力して行うということに一定の理解を示していることなどが示されている. 高野ら5)は,4ヶ月あまり通行止めされたトンネルを対象に,通行頻度から影響度合いの異なる住民(n=224)の道路維持管理についての意識構造の差違について,アンケート調査をもとに実証的に分析している.結果,維持管理費の増額に賛意を示すのは,現行の「維持管理費」が安いと感じ,維持管理に関わる「行政満足度」が高い人であり,通行止めによる被害を受けた人は,逆に維持管理費増額の賛意が低くなるといった成果を導出している. 塚原ら6)は,コミュニティ・ゾーン形成事業の「整備後一定期間供用後」の地区を分析対象として,整備デバイス等の維持管理に対する住民意識(n=296)について分析している.結果,自宅前道路の満足度意識について,特にコミュニティ道路等の整備路線については,道路内の維持管理状況が満足度意識に大きく影響する要因であること,維持管理に対する住民の参加意向については,コミュニティ道路等整備路線だけでなく,整備路線以外の人も参加しても良い意向があること,維持管理への満足度やその参加意向の向上が,道路満足度だけではなく,景観が改善し地区内の雰囲気が明るくなることによって治安が向上したといったような間接的整備効果へも強く影響していることを明らかにしている. これらの成果は,住民の考える道路の価値や道路整備・維持管理に対する住民意識を理解するうえで,有用である.一方,検討をすすめようとするゾーン30プラスのさらなる推進を目指すうえでの知見の積み上げという観点からは,より多角的・俯瞰的視点での価値について理解しつつ,さらにそれがどのように住民の当事者としての関与を促すかの理解には十分とはいえないものと考える. 本章は,地方都市に居住する住民の生活道路の価値に対する意識を把握し,特にゾーン30プラスをはじめとする生活道路の整備・維持管理における住民の当事者意識の醸成に資する基礎的知見を得ることを目的としている. 4-2.方法 調査方法 表 4-1に調査概要を示す.調査対象は,愛知県,三重県,岐阜県の東海3県に居住する方である.なお,一般に人口,商業集積規模が大きい政令市は,地方都市の中でもその性格が特異であることから,本調査では対象外とした.また,著者らの居住地である豊田市居住者の回答は,当該都市の特徴を分析する想定であった
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