4.生活道路に対する住民意識の把握 4-1.はじめに 少子高齢化の波は必至であり,それは特に地方都市の喫緊の課題である.この問題は道路行政の在り方においても多大な影響をもたらす.先に示したとおり,少子高齢化による財政悪化と民生費の増大が,必要な道路予算への削減につながっているといった指摘がある1).財源の問題以外にも乗用車交通量の頭打ち傾向(leveling off)の議論2),高齢人口が圧倒的となる人口構成の変化やコロナ禍を契機に広がりをみせるリモートワークなど,道路を使う「人」の行動パターン変化の問題も予想される.このような変革期における適切な道路整備や維持管理方法を検討するにおいては,これまでの行政主導の慣例にとらわれない在り方に関する基礎的な知見を積み上げることの意義はますます高まっているものと考える.特に,「これまで社会インフラの建設や維持管理は,住民が税金さえ払えば,自治体や建設業に行ってもらえるものであったが,これからはそうはいかない.大学や学会がインフラの現状と将来像を示した上で,自治体と建設業が責任を持ってインフラの維持管理に当たり,住民も当事者意識を持って,維持管理の一端を担うことができれば,住民主導,官学産民の連携による新たな維持管理体制が構築できる可能性がある」といった指摘3)があるように,道路の維持管理における住民の当事者意識の醸成を通じた道路整備・維持管理の在り方を模索することは,財源の課題が大きい地方都市においてひとつの重要性な着眼点であるだろう. さて,道路の中でも住民にとって身近な生活道路は,比較的当事者意識を醸成しやすい道路であるように思われる.なかでも,土木計画の分野では,安全面でのあり方が議論の俎上に乗ることが多く,近年では,住民を含む多様な関係者合意が求められる物理デバイスの設定を前提とするゾーン30プラスの整備推進が期待されている.この推進において住民の役割は極めて大きく,その主体性をもった取組が期待されるところである.住民の道路整備・維持管理に対する当事者意識の醸成を図るためのアプローチを検討するにあたり,まずもって住民が生活道路に対してどのような機能を希求しているか―ここでは,これを「価値」と称する―についての理解が欠かせないと考える.とくに,ゾーン30の整備においては住民側からの発意が整備のきっかけとなっているとする現状もある[1]なかで,住民にとってどのような価値が高いと認識されているかを把握することは,住民への働きかけ方などの間接的アプローチを検討するにおいて有益となると考える.これまで,あくまで行政の役割といった前提があったことからか,道路の価値や道路維持管理に関する住民の意識をみた研究は多くない.例えば,川口ら4)は,代表的インフラともいえる市町村道を対象に,吹田市(n=604)および高槻市(n=621)の31
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