これからの「生活道路」空間マネジメントに関する研究
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3-4.結論 本章で得られた知見は以下のとおりである. (1) 整備プロセスにおける発意者について,住民発意のある自治体とない自治体があり,住民発意のない自治体は当初目標年(2016年度)以降の整備がなく,また整備も短期間に集中的に整備がされている可能性があることを示した.また,ゾーン30の行政(道路管理者)発意による整備は極めて限られる可能性が高いことを示した. (2) 住民発意では,最高速度区域30km/hに併せ,道路側での対策が実施されている可能性が高い一方,警察発意では,対策が実施されていないケースもあり,とくに道路管理者側でゾーン30の整備状況を把握できていない場合もあることを示した. (3) 警察発意では,警察庁からの目標値に従い,各警察署が道路管理者と調整を踏まえて推進されていたこと,その際,交通量,交通事故といった観点から箇所選定において道路管理者との調整がなされていたこと,行政発意の限られた例では,将来的な整備に資する知見を蓄積したいとの意向があったこと,住民発意では,地域の抜け道の速度抑制や交通事故の頻発が契機となっている可能性があることを示した. (4) ゾーン30は整備目標年(2016年度末)前後での整備数に大きな差が生じており,愛知県の場合,整備目標年前後で,整備箇所数が80%以上下落していることを示した. (5) 区部(名古屋市)に比べ,市部や町村部では,目標年以降に整備を実施した自治体とそうでない自治体のばらつきが大きく,特に,目標年以降に指定がみられなくなった自治体が市部で70%,町村部で83%を占めることを示した. (6) 目標年以降に最高速度区域30km/h指定のあった自治体群となかった自治体群の地域特性を比較した結果,区部では両群に差があるといえないこと,市部では都市規模が比較的大きい自治体ほど目標年以降にも整備が継続されていることを示した.具体的には,市部では,人口関連指標,特に高等学校関連で両群に有意差(p<0.05)があった一方,財政的な差(財政力指数)や整備が求められる地域面積の差(可住地面積,DID面積)に有意差があるとはいえなかった. (7) 最高速度区域30km/hの整備位置について,整備目標年以降に指定されたものは隣接区域までの平均距離が短くなっていることを示した.特に,名古屋市以外の市町村部でその傾向が顕著であることを示した. なお,今後の課題として,今回の成果は愛知県内の4市のヒアリング結果を前提としたものであり,物理的デバイスの整備状況を含め,今後,検証数を増やすこと29

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