(2)整備目標年前後での傾向 22 JARTICから公表される最高速度区域30km/hデータを活用し,市町村別の整備目標年前後での状況をみる.なお,ここでは,名古屋市の区部,市部,町村部といった行政区分別で整理した.結果を表 3-6~表 3-8に示す.変動係数から,区部(名古屋市)に比べ,市部や町村部では,目標年以降に整備を実施した自治体とそうでない自治体のばらつきが大きいことがわかる.特に,目標年以降,指定が全くみられない自治体が市部(70%,21市),町村部(83%,5町)で多く散見されている. この目標年以前のみ最高速度区域30km/hの指定がされた自治体と以降にも指定がされた自治体の特徴を整理する.なお,町村部においては,目標年以降に指定された自治体が少ない(蟹江町のみ)ことから,今回比較実施をしていない.比較に際して採用した指標は,ゾーン30整備数への影響が予想された財務関連指標(財政力指数),人口関連指標(総人口,人口集中地区人口,等),地域関連指標(可住地面積,DID面積),学校関連指標(施設数,生徒数,等),交通事故指標(死傷者数,死者数)である.データは,参照できる最近年のものとした.これは,設定した両群の比較に際して年次を統一することが望ましいと考えたこと,今回採用した各指標は参照期間(2012〜2021年)での急激な変化が予想しづらいことから,結果に与える影響は小さいものと考えたことによる. 名古屋市の区部の結果を表 3-9に示す.両群間の平均値における統計的な差について,Mann–Whitney U testを実施した.結果,いずれの指標においても有意差があるとはいえなかった.全体的に目標年以降に指定がされている区の値が小さい傾向にあるものの,この差に統計的な意味があるとはいえない. 他方,市部における結果を表 3-10に示す.名古屋市同様,Mann–Whitney U testを実施した.結果,総人口(p<0.1),15歳未満人口(p<0.1),65歳以上人口(p<0.1),昼間人口(p<0.1),小学校児童数(p<0.1),中学校生徒数(p<0.1),高等学校数(p<0.05),高等学校生徒数(p<0.05),交通事故死傷者数(p<0.1)に有意傾向もしくは有意差があった.名古屋市の状況と異なり,いずれも目標年以降に指定がされている市の値が大きい傾向にある.特に,高等学校にかかる指標は5%水準で有意であり,両群間での差が際立っていることがわかる.なお,当初想定した財政的な差(財政力指数)や整備が求められる地域面積の差(可住地面積,DID面積)は統計的に影響しているとまではいえなかった.
元のページ ../index.html#28