これからの「生活道路」空間マネジメントに関する研究
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2-3.ゾーン30 ゾーン30の概要 ゾーン30は,我が国において2011年度(平成23年度)に導入が始まった面的な交通安全対策である.ゾーン内は最高速度30km/hの区域規制の実施を前提とし,その他の対策は地域住民の意見や財政的制約も踏まえつつ,実現可能なものから順次実施することとしている.当初5箇年での整備目標であった全国3,000箇所の整備を2016年度末に達成し,2021年度末現在における全国の整備箇所数は4,186箇所となっている. 論文の傾向 まず,ゾーン30を含む生活道路の面的な交通安全対策の導入推進にかかる研究が見られた3)4)5)6)7)8).例えば,三村ら4)は,豊田市の自治区を対象にして,自治区のゾーン30導入意向と実際の歩行者・自転車事故の発生率との関係について調査している.結果,ゾーン30導入意向がある自治区が必ずしも歩行者・自転車事故の多い自治区ではないことや導入意向と地区特性の関係性について明らかにしている.竹井ら6)は,兵庫県の生活道路対策エリアの事例を通して,交通ビッグデータを活用した交通課題の定量化や有識者の意見の反映による交通安全診断等について,具体的な取り組みを報告している.結果,地域住民・学校関係者・道路管理者・警察等の立場や視点の異なる関係者に加えて,有識者の意見も反映することで,交通安全を重点的に推し進めるエリアとして目指すべき方向性を明らかにしている. また,ゾーン30において適用可能性のある個々の交通安全対策に焦点を当てて,その効果等を検証した研究が見られた9)10)11)12)13)14)15)16)17).例えば,松尾ら9)は,速度超過した際にドライバーに警告を与えるシステムである助言型ISAや速度遵守実態に応じて報酬やペナルティを適用することで速度抑制のためのインセンティブを働かすという概念であるIPNSによる速度抑制効果について,ゾーン30を含む生活道路で検証している.結果,これら施策の適用解除後もゾーン30区間では一定の速度遵守率を保つ傾向にあること等が示されている.橋本ら11)は,生活道路におけるカラー舗装の導入に対する地域住民の賛同意識に着目し,愛媛県の住宅地区における地域住民の意識調査を行っている.結果,賛同意識が低い人はカラー舗装に期待される効果に対して低い評価をし,生活道路に対しては歩行者・自転車や地域住民の生活機能の優先空間に対して低い評価をすることが示されている. 海外のゾーン対策について,これまでの各国の導入の歴史を整理した研究1)や現状を整理した研究18)も散見された.青木ら1)は,歩車共存道路の導入実態について各国の動向を時間的経緯に着目して整理している.結果,欧州では面を意識5

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