歩車分離信号の効果に関する研究
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車両分離方式の歩車分離が導入された大規模交差点における聞き取り調査ならびに観測調査に基づき、安全性や円滑性に関する利用者意識・挙動について経時的に分析した。利用者意識調査より、安全性の観点では導入直後は高い評価であったが,一定期間後は評価が低くなることがわかった。交錯事象数の分析より、導入後は交錯事象数が大幅に減少することがわかった。豊田都市交通研究所(TTRI,2021)は過去歩車分離の実績や事故データを踏まえて、歩車分離に関する今後のあり方について議論された。愛知県における歩車分離導入後事故が減少したことを明らかにした。 安全性に関する予測研究は知っている限り、該当する既往研究がない。 円滑性に関する実測研究について、佐々木ら(2002)は渋滞が発生した上に、ドライバーの満足度は低くなったことがわかった。齋藤ら(2003)は渋滞が発生しなかったという結論があった。吉田ら(2003)は横断時間が短いと感じたこと、やドライバーは交通円滑性に対する要望があったことがわかった。雨宮・尾崎(2004)は左折先出しを伴った歩車分離信号の導入により、車両流と分離した横断歩行者青時間を確保し、左折交通量の円滑性を向上させているという結論があった。阿部(2005)は交差点のサービス水準は低くなることが明らかにした。鈴木ら(2009)や鈴木ら(2010)は歩車分離により円滑性低下になることがわかった。 円滑性に関する予測研究について、小川・川居(2008)は交差点の交通条件に応じた歩車分離式信号の導入による影響を分析するため、交差点の交通処理能力を算定するシミュレーションモデルを構築し、交通処理能力の面から歩車分離の導入が期待できる交差点の交通条件について明らかにしていた。結果、歩行者交通量が1000人/h以上、自動車の左折率が20%以上である場合、導入によって自動車の交通処理能力につながることが分かった。逆に左折率が低い場合は交通処理能力が低下することが示された。張・中村(2017)は横断歩行者と左折車の交錯に着目し、右折専用現示を有する四現示制御、歩行者専用現示制御、歩行者先行信号現示制御(LPI)の性能を比較し、交差点性能などについて分析していた。結果として、車両総遅れ時間比より、主道路と従道路の横断歩道におけるLPIがそれぞれ6秒、15秒を超えるような場合には歩行者専用現示制御の方が適していることが分かった。 歩車分離の安全性について、歩行者と自動車の交錯が大幅に減少され、安全性が向上されたことが明らかにしたが、導入により信号無視率の増加が注目すべき。 円滑性に関して、過去の多くの実測研究から、交差点のサービス水準が低下する傾向があることが示されている。しかし、一定の歩行者交通量や自動車左折率がある場合には、交差点のサービス水準が高くなることが予測されることが明らかになった。実測研究は実際のデータを使用して、交通現象を正確に理解できるが、計画や設計に対して効果の予測はできない。歩車分離の導入効果については、実測研究を行うことで導入後の効果を直接確認できる4

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