豊田市駅前大型商業施設の開業による回遊行動への影響に関する研究
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14 訪者数も一定になると想定されることから、端末検出数に変化が見られなかったと考えられる。 また、周辺との回遊行動に着目すると、「豊田市駅西側ペデストリアンデッキとTM若宮駐車場」、「豊田市駅西側ペデストリアンデッキとKiTARA」、「TM若宮駐車場と新豊田駅・新とよパーク」の組合せにおいて、回遊端末数の増加が確認された。 豊田市駅西側ペデストリアンデッキはTM若宮駐車場(T-FACEの最寄り駐車場)利用者がT-FACEへ移動する際の動線上に位置するため、T-FACE A館(1階段~6階)のリニューアルオープンによって両センサ間の回遊端末数が増加したと考えられる。 豊田市駅西側ペデストリアンデッキとKiTARAはそれぞれ豊田市駅の西側と東側に位置しており、大きな変化がなければ両センサ間での回遊端末数が増加することは想定しにくい。分析期間内で生じた大きな変化は「T-FACE A館(1階~6階)のリニューアルオープン」であることから、T-FACEへ来訪し、かつKiTARAにも来訪する人(あるいはその逆)が増加したことで両センサ間の回遊端末数が増加した可能性が考えられる。 新豊田駅・新とよパークは、TM若宮駐車場とT-FACEの間を徒歩移動する際の動線上にはないが、南方面からの来訪者がTM若宮駐車場を利用する際の動線上には位置している。このことから、自動車で来訪中に新豊田駅・新とよパークのセンサで検知され、駐車した際にTM若宮駐車場で検知されるという条件に合致した行動をとる人が増加した結果、両センサ間の回遊端末数が増加したと考えられる。TM若宮駐車場の利用者が増加したきっかけはT-FACE A館(1階~6階)のリニューアルオープンである可能性が高く、「TM若宮駐車場と新豊田駅・新とよパーク」間での回遊端末数が増加したことはリニューアルオープンの影響によるものと考えられる。 以上のことから、T-FACE A館(1階~6階)のリニューアルオープン直後の期間においては、リニューアルオープン直前の期間(2022年3月)と比べて、豊田市駅西側エリアへの来訪者が増加していた可能性があると考えられる。また、リニューアルオープンによって一部の周辺地点との回遊が増加していた可能性も考えられる。ただし、「リニューアルオープンしたT-FACE A館へ来訪する際に通過する人が多い」という理由での回遊増加である場合も少なくないと考えられ、豊田市中心部の活性化に寄与するような効果があったかどうかについては慎重な議論が必要であると考える。 なお、パケットセンサデータから分かるのは人流の「量的側面」のみであり、人流の変化が観測された場合に、具体的にどのような属性(性別や年齢等)の人が影響を受けたのかまで把握することはできない。このため、より詳細に、T-FACE A館(1階~6階)のリニューアルが周辺の人流に与えた影響を把握するためには、属性情報を補完できるような他のデータと組合せた分析を行うことが必要である。

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