利用者の個人差を考慮した高齢者のMaaSに対する利用意向に関する調査研究
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2 公益財団法人豊田都市交通研究所、「豊田市におけるMaaS導入可能性に関する研究」自主研究報告書、 WEBアンケート調査を実施した。本研究では、先行研究による知見を踏まえながら、高齢MaaS利用意向の影響要因を分析する点である。既往研究では、利用者を対象とした選択行る。即ち、どのようなMaaSサービスを提供したら良いかとの議論である。一方で、利用者側の視点から、どのようなMaaSサービスが望ましいかに関する議論は極めて少なく、特に高齢者を対象としたMaaSの社会受容性に関する調査研究はほとんどない問題点にある。また、高齢者MaaS利用の課題点として、デジタル・ディバイドや利用者の個人差が指摘されており、高齢者を対象に、MaaSの利用を円滑に促進させるため、これらの問題点を検討する必要がある。ここで、デジタル・ディバイド(いわゆるデジタル格差)は、高齢者は非高齢者と比較して、インターネットを使いこなせないこと、デジタル機器保有率が低いこと、および、キャッシュレス決済の利用意向が高くないことを指す。また、利用者の個人差(いわゆる消費者の異質性)は、同一日に同一商品を同一の場所で購買したとしても、人が違えば購買に至るメカニズムに差が生じ、その反応も異なることを指す。 このため、本研究は高齢者を対象としたMaaSの受容性を向上させるための方策検討に向けて、高齢者のデジタル・ディバイド実態や解決策を把握するとともに、利用者の個人差を考慮したMaaS利用意向の影響要因を明らかにすることを目的とする。 1-2 研究特徴 本研究の特徴は3点が挙げられる。 1点目、当研究所の2019年度の先行研究(暮らし⑤MaaS導入可能性)2を踏まえた自主研究テーマであるため、研究遂行をするための環境が整っている点である。先行研究は愛知県豊田市におけるMaaS導入可能性を把握するため、高齢者を含む豊田市民を対象とした者のMaaS導入可能性の検討に留まらず、日本各地で進められたMaaS実証実験の先進事例から、どのような問題が生じているか及びそれらの対策を整理する。 2点目、「地方都市型」や「地方郊外・過疎地型」の両方を調査研究内容とする点である。本研究は、交通利便性の低い地域に居住している高齢者の移動手段確保に向けた方策を検討するため、国土交通省の掲載しているMaaS先行事例としての「地方都市型」及び「地方郊外・過疎地型」を焦点として、議論を展開していく。ただし、必要に応じて、「大都市型」、「大都市近郊型」、「観光地型」などの先進事例を触れる可能性がある点に留意する必要がある。なお、国土交通省の取りまとめたMaaSの実現イメージを図 1-2に示す。 3点目、利用者の個人差に着眼した利用意向の選択行動分析モデルを構築することで、動分析モデルでは、固定パラメータによる説明変数が確定的な効用に与える影響分析が主流であり、異質性が表現できるランダムパラメータによる説明変数が確率的な効用に与える影響分析は見当たらない(図 1-3に参照)。よって、本研究では、高齢者のMaaSに対する利用意向(利用したいかどうか)をより一層理解させるため、利用者のMaaSに対する利用意向の異質性を考慮する。 2020年3月。 2

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