コロナ禍が豊田市の都市交通に与える影響のモニタリング
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政府緊急事態宣言1回目の介入前後では,他の介入と比較して人出等が大きく減少したこと、政府緊急事態宣言1回目の解除後に歩行者通行量よりも滞留人口の回復が小さいことから,滞在時間が短くなったこと、交通ビッグデータと意識調査から得られたそれぞれの知見はおおむね一致していることを示している。 (9)住まい方への影響 住まい方への影響としては、不動産資料請求の変化、居住地選択意識の変化、郊外住宅地の選択要因に関する知見が積み上げられている。例えば、鈴木ら33)は、首都圏の新築・中古住宅に対する不動産ポータルサイト上での資料請求状況の分析を通して、COVID-19第一波前後に生じた潜在的な住宅選好の測定を試みている。結果、COVID-19第一波の外出自粛期間中には、資料請求量の増加がみられたこと、外出自粛期間中の資料請求量の増加が(一時的に)顕著であった物件特性をみると、都心乗車時間が45分以上の中古物件、最寄駅から15-20分以上離れた中古物件、延床面積が100-150m2以上の広い物件が挙げられたこと、都心乗車時間が45分以上の地域においては、海浜や森林に近接した物件で、外出自粛期間中やその後における資料請求量の増加が顕著であったことを明らかにしている。齊藤36)は、横浜市金沢区での在宅勤務経験を通じて、職住融合型暮らし実現による郊外住宅地の再生にむけての課題を整理している。結果、郊外住宅地でテレワークが進行していること、テレワークの希望は、職種、年齢、勤務場所、通勤時間、自宅の立地、家族構成等により異なっており、通勤から解放されることが一番大きな理由であること、テレワークを住宅地において推進するには、食、運動、気分転換、仕事の支援(場や機会)等の機能を住宅地に導入することが必要であることを示している。 (10)まとめ 今回は、あくまで、限られた条件下で収集した文献での整理であり、コロナ禍における都市・交通に関する研究は現在進行形で蓄積され続けている。一方、これまでの研究は、非常事態宣言下といった非常時の状況に着眼したものが多いことは一つの傾向として窺い知れるものである。 他方で、これからのコロナ禍後の社会を見据えたなかでは、人々のコロナ禍後の行動の変容を見据えることが重要であり、この観点からも本研究で取り組むモニタリングの意義は高い。 また、地域活動の資本となる福祉関連施設等への影響をみている研究は散見されるものの、地域活動によりはぐくまれたであろう、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)への影響の深刻さも予想される。この観点からの現状を把握しておく意義も同様に高かろう。 さらに、在宅勤務等の推進により変化した活動量の変化に着眼している研究11

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