における物理的距離の取り方が推奨されるようになった点を踏まえ、公共空間における歩行者の接近確率を推定するツールを開発している。結果、時間帯別の歩行者の歩行速度に差はない一方、歩行者の回避行動の平均開始距離がパンデミック時の方が長いことを示している。林ら45)は、障害者支援施設における新型コロナウイルス感染対策について、アンケート調査を実施している。結果、個室やユニットの状況、食事・日中活動・浴室などの空間の建築形態によって、感染対策に差があること、入居者の主な障がいの有無により、感染対策の実施に差があり、特に、知的障がい者が中心の施設では、対策が困難な傾向がみられたことを示している。 (7)人口動態への影響 人口動態への影響としては、昼間人口の変化、居住選択地域の変化に着眼したものがみられる。例えば、根本ら26)は、2020年4月の研究事態宣言期間中の茨城県つくば市を対象に、モバイル空間統計(NTTdocomo)を用いて、外出制限の効果を分析している。結果、住宅地では昼間の人口増加がみられた一方で、商業施設・研究機関・大学の立地する地区では人口が減少していたこと、人口増減は、市外人口の流動と相関があり、また土地利用の違いでも説明できることを示している。弊所の成果35)では、愛知県豊田市をケーススタディとして、コロナ禍における地方都市の人口動態の変化と居住地選択の意向変化を分析している。結果、人口動態について転入者数の減少により人口減少へとなっていること、コロナ禍前後で居住地選択の考え方が変わっていることを示している。 (8)政策の効果評価 政策の効果評価としては、政府要請、緊急事態宣言の効果、コネクティッド・メディスンへの期待、ビッグデータの活用による評価といった視点での研究が散見される。例えば、秦ら6)は、北海道独自の緊急事態宣言,政府による一都6府県,全47都道府県を対象として発した緊急事態宣言によって,都道府県間流動がどのように変動したのかを分析している。結果、緊急事態宣言は流動の減少に有意に関係していること,緊急事態宣言が解除された直後には,流動は有意に増加するが,緊急事態宣言以前と比較すると,有意に減少したままであることを示している。上田らは、G7各国について,労働者の賃金に対する政府補償の充実度合いが行動制限及びその緩和に与えた影響について分析をしている。結果、政府による補償の充実は感染拡大を抑止するための行動制限を促進する効果とともに,制限の解除時においては経済活性化の促進効果を持つことを示している。西堀ら34)は、政府緊急事態宣言1回目,県独自宣言,政府緊急事態宣言2回目による人出等への影響をモバイル空間(分布統計)による滞留人口と歩行者通行量のデータを用いて分析している。結果、多くの施設に休業要請が出された10
元のページ ../index.html#16