コロナ禍が豊田市の都市交通に与える影響のモニタリング
12/121

6 キーワード別傾向 以下では、キーワード別の論文傾向について整理した結果を記載する。 (1)地方都市の状況 地方都市の状況としては、本研究の過年度成果である豊田市など特定の都市の状況をみたもの21)22)35)が多く、地方都市特有の状況を考察している研究は限られている。例えば、岡田ら32)は、首都圏と地方圏のCOVID-19流行前とコロナ禍の代表交通手段から転換パターンを分析し,公共交通機関の利用継続者・停止者の特性を把握している。結果、「通勤・通学」では地方圏から首都圏にかけて代表交通手段の変化は大きくなったが,「趣味や娯楽」では居住地域による差は小さかったこと、公共交通の利用継続・停止においては、首都圏は駅への近接性が影響していたが,地方圏では運行間隔がそれに影響していたことを示している。 (2)公共交通への影響 公共交通への影響としては、上述した岡田ら32)の成果をはじめ、交通手段別にコロナ禍における利用実態を追っているものが多い。鉄道交通は首都圏を対象とした研究が散見される。阿久津ら20)は、自動改札データと定期券情報を用いることにより,通勤行動をはじめとする都市鉄道需要の変化について分析をしている。結果、利用者の乗車時刻にはほぼ変化が起きていないことを示している。町島ら18)は、東武伊勢崎線・東上線をケーススタディ対象として,男女別鉄道利用実態と利用変化の影響を分析している。結果、両線において女性の23区従業者が増えており,居住地・従業地選択として乗り換えの容易さが重要視されていること,COVID-19により都心3区とその周辺区における通勤者の減少が大きいことを示している。バス交通について、鈴木ら21)は、新型コロナウィルスによるバス利用者数の減少について、豊田市おいでんバスのICカードデータを用いてその実態把握を行っている。結果、2021年2月、3月においても休日のバス利用が少ないことや、長距離のバス利用が少ないこと、文化施設等へのバス移動も少ない可能性を示している。航空交通について、野田ら12)は、民間フライトログデータ公開サイト「Flightrader24」を用いてフライトデータを収集し,羽田空港発着の7路線に着目して便数や提供座席数の推移を定量的に分析している。結果、感染の拡大状況に応じて運休や便数を減少させつつも,小型機への機材変更等により最低限のサービス水準を確保していたこと、北海道や沖縄などの離島路線では,貨物輸送能力の確保のため,大型機での運航が継続されていたことを示している。なお、今回の整理では、海上交通に関するものはみられなかった。 また、事業者の経営実態をみているものもある。AINI, et al.8)は日本全国の中

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る