歩行者優先意識の定着促進に資する地域活動方策
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1-1 研究の背景と目的 1 はじめに わが国における交通事故発生件数および死傷者数は近年減少傾向にあり、平成28年には67年ぶりに死者数が4千人を下回った。さらに令和2年には3,000人を下回り 2,839人、令和3年は2,636人まで死者数が減少しており、様々な交通事故対策の取組みが功を奏しているものと捉えられる。尤も、コロナ禍による交通量の減少も少なからず影響している可能性も否定できない。しかしながら状態別の死者数を見ると、致死率が高い「歩行中」や「自転車乗用中」に分類される死者数の減少は鈍く1), 2)、歩行者の安全対策は今後も注力すべき課題であると言える。 豊田市では、官民あげて歩行者保護に重点を置いた交通安全啓発施策が展開しており、平成28年11月から『歩行者保護モデルカー活動』に取り組み、歩行者保護に対するドライバーの意識向上という面で一定の成果が得られている。また、平成29年度に(公財)豊田都市交通研究所が実施した研究におけるドライバーへのアンケート調査では「地域の知人による立哨」「謝意メッセージ」など、効果的な啓発方法の可能性が示唆されている。 これを踏まえて、平成30年度には地域住民や地域企業従業員ら自身が取り組むことのできる交通安全対策として実施している街頭で交通安全の呼び掛けと連動し、無信号交差点において歩行者の横断を優先するために停止した車両に謝意を表する「能動的街頭啓発活動」の実証実験を豊田市交通安全防犯課とともに実施し、一定の成果を得た3) 。市では「とまってくれてありがとう運動」を展開するに至っている。これは小学生への交通安全教育的なアプローチにより、地域の交通安全啓発活動としてスタートし、その後、市内企業内での展開が成されているものである。 さらにハード的な対策としても、信号設置が困難な無信号横断歩道において「ぴかっとわたるくん」という、横断歩行者の存在をドライバーに報せる押しボタン式の発光設備の設置や、下流の交差点等の渋滞による滞留車両が横断歩道を塞ぎ死角を作ることを防ぐための路面標示などの実装もなされている。 以上を踏まえ、一連の豊田市における歩行者優先施策を評価した上でさらなる交通安全意識向上、効果的な施策のあり方を検討したい。そこで本年度から2ヶ年をかけて、地域に定着する歩行者優先意識向上策の検討に取組む。アプローチとしては、近年、土木系各分野における交通行動変容の方策の一つとして注目され有効性が示されている「ブランディング」に着目する。即ち、豊田市の交通安全に対する姿勢・方針をブランド化し、地域への定着を図ろうという意図である。 -1-

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