11.はじめに 1-1.背景 少⼦⾼齢化の波は必⾄であり,それは特に地⽅都市の喫緊の課題である.この問題は道路⾏政の在り⽅においても多⼤な影響をもたらす.特に,道路維持管理の在り⽅は⼤きな課題である.例えば,少⼦⾼齢化による財政悪化と⺠⽣費の増⼤が,必要な道路予算への削減につながっているといった指摘がある1).財源の問題以外にも乗⽤⾞交通量の頭打ち傾向(leveling off)の議論2),⾼齢⼈⼝が圧倒的となる⼈⼝構成の変化やコロナ禍を契機に広がりをみせるリモートワークなど,みちを使う「⼈」の⾏動パターン変化の問題も予想される.このような状況が織りなす変⾰の影響は⼤きいものと考えるが,そのわかりづらさや変化のゆるやかさからか,地⽅都市⾏政において危機意識が醸成されず,それらを踏まえたみちの在り⽅に関する議論が進んでいない可能性がある. みちの在り⽅の議論で⼤きなものとして,道路の維持管理の話題がある.道路の維持管理については,専⾨家の間では⻑く議論が進められていた問題であるが,特に2012年に発⽣した笹⼦トンネル天井板落下事故を契機に,国⺠の関⼼を⼤いに引いたといった岩城3)による社会インフラの維持管理の歴史の概観の中で指摘がある. 橋梁やトンネルの崩落といった安全性に直結する課題だけでなく,路⾯の劣化による⾛⾏円滑性の課題,景観悪化による地域イメージの低下など,道路維持管理の質の低下による⼈々の社会活動への影響は⼤きい.GDPの伸びの鈍化に対⽐してストック量の膨⼤さから,投資が減耗に追いつかなくなり産業の基盤が崩壊するという「成⻑の限界」4)のシナリオを背景に,技術的アプローチからの⻑寿命化の重要性が強く指摘されており5),2013年のインフラ⻑寿命化基本計画の策定を⽪切りに,⾃治体レベルでの⾏動計画に基づいた対策が勢⼒的に進められている.他⽅で,岩城3)が「これまで社会インフラの建設や維持管理は,住⺠が税⾦さえ払えば,⾃治体や建設業に⾏ってもらえるものであったが,これからはそうはいかない.⼤学や学会がインフラの現状と将来像を⽰した上で,⾃治体と建設業が責任を持ってインフラの維持管理に当たり,住⺠も当事者意識を持って,維持管理の⼀端を担うことができれば,住⺠主導,官学産⺠の連携による新たな維持管理体制が構築できる可能性がある」と指摘するように,道路を
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