地⽅都市におけるこれからの「みち」の在り⽅に関する 基礎的研究
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21(2)要因分析の結果 表 3-5に分析結果を⽰す.モデルの精度を⽰す調整済み決定係数は,いずれのモデルも⾼くなく,採⽤指標のさらなる探索,使⽤するモデルの再検討の重要性は⾼い.他⽅で,選定指標のなかで⾼度に有意(p<0.01)となった指標が散⾒され,限定的ではあるものの,影響要因について考察は⾏えるものと考える.以下ではモデル精度の限界を踏まえつつ,結果についてみていく. 道路空間の変数では,幹線道路の中⼼市街地のみすべてのモデルで有意となっている.係数の符号をみると,参照とした中⼭間地域の幹線道路に⽐べ,「低速・⼩型⾃動⾞重視」のみマイナスの値となっているものの,それ以外の価値はすべてプラスの値である.当該道路空間で重視される価値の多様性がうかがえる.他⽅で,⽣活道路の中⼭間地域は,「低速・⼩型⾃動⾞重視」がプラスの値で有意(p<0.05)となっている.当該価値の参照と⽐べた場合の⾼さがうかがい知れる⼀⽅,それ以外の価値は有意とはいえず,差があまり⼤きくないことがうかがえる. 属性の変数は男性ダミーが「つながり・にぎわい重視因⼦」,「⾃動⾞重視」を除いて,年齢が「歩⾏者・⾃転⾞重視因⼦」を除いて有意となっている.符号をみると男性の場合,いずれの価値も低下することがわかる.また,⾼齢になるほど「安全・安⼼重視因⼦」,「弱者重視因⼦」の価値が⾼まる⼀⽅,「つながり・にぎわい重視因⼦」,「⾃動⾞重視」,「低速・⼩型⾃動⾞重視」の価値が低下することがわかる. 居住地は,中⼼市街地居住と,郊外居住並びに中⼭間地域居住で傾向が反転しており,前者はみちに求める価値が低下する傾向がみられ,後者は上昇する傾向が⾒られる. モビリティの変数は,活動能⼒・量にかかる2変数(歩⾏可能距離,総活動時移動では,後者の影響が⼤きく,特に,「安全・安⼼重視因⼦」,「弱者重視因⼦」は⾼度に有意(p<0.001)となっている.符号をみると,当該量が増えると,「安全・安⼼重視因⼦」の価値は⾼まる⼀⽅,「弱者重視因⼦」の価値は低下する傾向がみられる.⼿段に関わる変数をみると,関連性のある価値に違いが⾒られ,動⼒系のモビリティ(⾃動⾞・バイク)は「安全・安⼼」の価値を重視しておらず,活動系のモビリティ(⾃転⾞・徒歩)は,当該モビリティに関連性のある「弱者重視」や「歩⾏者・⾃転⾞重視」の価値が⾼いことがわかる.

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