8. おわりに 29 リアルタイム情報を用いて、平均遅延時間最小化を目指した1秒ごとに信号制御時間を更新できる信号制御アルゴリズムを開発した。特徴は以下の4点でまとめる。 (1) 伝統的な信号制御設計の原則と理念に基づいて、リアルタイム情報を用いた最適化を目指す。 (2) 平均遅延時間の計算方法と非線形計画モデルを活用し、平均遅延時間最小化結果を算出する。 (3) 1秒ごとに、インプットとする目標交差点に向う各流入部の車群の情報(車両の瞬間通過速度、車両が光ビーコンに離れる時間と車両ID)の更新による交通需要の計算―>最適化を目指す信号制御時間の計算アルゴリズムの実行―>アウトプットとする新しい計算した信号制御時間の更新、三つのプロセス0.1秒内に完成できるシステムを構築する。 (4) 渋滞が発生した場合二つの対応方法の検討:①「交通密度によって交通流量を算出した上、最適な信号時間を再計算」(オリジナル)②「青時間を2秒ずつ延長」(実在感応型信号の対応方法からの発想)。 構築したアルゴリズムを検証するため、2つの観点から13の交通流シナリオを想定する。様々な交差点需要率に加えて、南北方向と東西方向の交通需要の様々な組み合わせの下で、検証時間内に各進行方向から相対的安定な交通流の輸入を確保した上で、アルゴリズムの交通処理能力を検証するため、観点1で9つのシナリオを想定する。観点2では、4つのシナリオを想定し、短時間内激烈な交通需要の変化条件下、アルゴリズムの交通処理能力を検証する。参考文献(2018)の計算方法を比較対象となる。渋滞が発生した場合の二つの対応方法は二つのモデルで分けて検証する。シミュレーションで検証を行う。所要シミュレーション時間、平均遅延時間と変動係数を検証の評価指標とし、シミュレーションのアウトプットから計算する。各モデルのシミュレーションは、10Rでシナリオ(または比較)ごとに実行され、評価指標は10回シミュレーションの平均値とする。 視点1の検証結果は、開発されたアルゴリズムが高い交差点需要率に対して優れたパフォーマンスを明らかにする。ただし、渋滞がない時交差点需要率が十分に低い場合、アルゴリズムの優位性が見られない。原因は、交通需要の少ない状態で、1時間の3600秒を平均車間時間(秒単位)で割った交通需要の計算方法の精度が低くなると推断する。
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